fromらてらて　赤い矢印の指す先は

カメオは特に特徴のない普通のサラリーマンだったが、自慢の妻のカメコと息子のウミオがいて幸せな家庭を持っていた。
そんなカメコがゴールデンウィークを使って実家に帰省することにしたので、カメオも誘われたが、重要な仕事があったため、断った。
５月６日、ゴールデンウィーク最終日である今日はカメコとウミオを迎えに行くことになっていた。

カメオの職場は海亀本線に原米線の２線が通る主要駅海亀駅の近くにあるが、自動車通勤をしていたカメオは
行き帰りの時に電車の往来が激しい踏切にほぼ必ず引っ掛かっていた。
平日休日問わず遮断機の→←の両方向が光り開いたと思ったらすぐ遮断機が下りるそんな開かずの踏切だったが
その日は踏切に引っ掛からず、「お、運がよかったな。」と思い海亀駅より拾いやすい北白石駅を選んでくれたカメコに感謝しながら帰宅した。

帰宅し、迎えの準備を済ませたカメオは「今から北白石駅に迎えに行く」とカメコにメールを送るためにスマホを開いたが
信じられないニュースの通知が来ていた。

「本日１７時、海亀県原米市で特急「うみがめ」１７号が脱線し川に転落。乗客の生存は絶望的である。また、この事故に伴い海亀本線、原米線の全車両が運転を見合わせることとなった。」

信じられなかった。うみがめ１７号はカメコが事前に乗ると伝えていた車両だった。
急いでカメオはカメコに、ウミオに電話するも何回かけても反応がない。
念のため北白石駅に行くも、カメコとウミオは何分待っても来ない。目に入るのは全線見合わせにより真っ黒になった時刻表だけだった。
カメオは何も出来ない自分にいら立ちを覚えながら、無事を祈ることしかできなかった。
だが、祈りは通じず３日後の５月９日、カメコとウミオの死亡が確認。遺体を前にカメオは泣き崩れた。

５月１６日
あれから一週間が経過した。カメコとウミオの葬式を終えたカメオはあの踏切の前に立っていた。
警報音が鳴ったのを聞くとカメオはゆっくりと歩き、遮断機を無視し線路の中に進入した。
「カメコ、ウミオ、何日も遅れてごめんな。ようやく父さんもお前たちの元にいけるぞ・・・」
カメオは電車に轢かれた瞬間、安堵の表情を浮かべていたらしい。

このカメオの自殺によって親友との約束に遅れそうになった女子高生がいるが、それは別の話である。