私は、推理作家のエルキュール。
妻が、素敵な孤島の宿があるから行きましょう、と誘うので、一緒に行くことにした。
なんと言っても孤島の宿と言ったら、密室トリックの定番だ。
何かいいアイディアも浮かぶかもと考えたのだ。
しかし、ここを舞台にするのはなかなか難しいな…と思ったのであった。
どうしてだろうか?
*この問題は、2020年10月〜の「ますか?」のお題と、「ヘラクレスの12の難行」を掛け合わせた、連作「エルコーレビアンカの12の冒険」の1問です。
この問題のテーマは、【泳ぎ vs ゲリュオンの牛たち】です。
転載元: 「La isla bonita【遅れてきたHBC】」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/6832
外国人作家のエルキュールは、伝統的日本建築とサービスの純和風旅館に初めて泊まったので、この状況で密室の設定をするのは難しいと考えたため。
私はエルキュール。
私の熱烈なファンだという女性、ユカと結婚した。
ユカは海外赴任中に私と知り合ったので、私はユカの母国には行ったことがなかったのだ。
それで、この休暇に、ご家族への挨拶を兼ねてユカの母国日本に行くことにしたのだ。
ユカは、日本の孤島には古い伝統的な宿があり、そこには暖かいお湯が湧いていて、泳げるほど広い風呂があると教えてくれた。
孤島ものは私の得意分野だ。
異国を舞台にした新作の構想を練るも悪くない。
しかし、行ってみて驚いた。
まずドアは左右に動く。鍵のシステムからして違うではないか。
そして、個人の部屋とパブリックスペースは紙製の左右に開くドアでしか仕切られていない。
鍵もないに同然だ。
これでは物理的な密室トリックは厳しいだろう。
何より、食事やらベッドメイキングのたびにメイドが部屋にやってくる。
プライベートな空間や時間が保てないので、何かあったらすぐに気付かれてしまう。
いや、宿泊者としてはこれはこれで良い経験なのだが、この設定で密室ミステリーを書くのはかなり難しそうだ。
そもそもこの国で密室ミステリーは成立しないのではないか。
「ユカ、日本の作家はこんな所を舞台にして密室もののミステリーが書けるというのか?」
「うん。たくさんあるんじゃないかな?」
世界にはまだ私の知らないことがたくさんあるものだ。
これはこれでまた良い刺激だ、と私は思った。