転載元: 「【猫ますか?リサイクル】冬野菜」 作者: 名無し編集者 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/5374
年末、久しぶりに実家に帰ったシン太郎が居間に入ると、猫が誰も使っていないコタツで丸くなっていた。
猫は母にとても懐いている。
母は2年ほど前に倒れて以来ほぼ寝たきりで、ほとんど部屋から出ないため、猫もだいたい母の部屋にいる。
母の布団は居心地が良いし、部屋はいつもエアコンで適温だ。
こんな寒い日に、誰もいない冷たいコタツにいる理由などないだろう。
ふと、「もしかして母は部屋にいないのだろうか」とシン太郎は考えた。
もしそうなら、理由として真っ先に思いつくのは病院への緊急搬送である。
「待て待て待て。それなら俺に連絡があってしかるべきだ。・・・とすると、連絡ができないくらいに切迫していたとか? まさに今救急車で運ばれている最中とか!?」
悪い予感が次々押し寄せてうろたえるシン太郎の耳に、玄関の戸を開ける音が聞こえた。
あわてて見にいくと、そこにはシルバーカー(手押し車)を玄関に引き入れようとする母の姿が・・・
「ああ、シン太郎! お帰りなさい! 思ったより早かったのね。」
「ちょっと待ってオフクロ、何で歩いてるの? 寝たきりじゃなかったの?」
「あら、言ってなかったかしら? 半年くらい前から少しずつね。でもたったこれだけ買うのに2時間もかかっちゃって。出迎えできなくてごめんなさいね。よっこらしょっと。ふう。」
寝たきりと思っていた母が、実は歩き回っていたというオチであった。