まだ薄暗い早朝。
玄関に立て掛けてある三本の傘を見ただけのカメコが、今朝の天気は晴れだと言い当てる事が出来た理由とは何だろうか?
転載元: 「朝の推理とステキな笑顔」 作者: つのめ (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/2505
【玄関にはパパママ自分用の三本の傘だけが立て掛けてあり、その場にはおじいちゃんの杖が無かった。
カメコちゃんは、「おじいちゃんが散歩に行ったのなら、今朝の天気は晴れだ。」と推理したのだ。】
まだ暗い早朝。
濃紺色の空を見上げた儂は、ふと息子の言葉を思い出して足を止めた。
「親父、一緒に暮らさないか?」
足を悪くした儂が、息子の提案に首を縦に振ったあの日から暫く経つ。
同居の当初は新しい環境と足を悪くしてしまったやるせなさに部屋に閉じ篭り塞ぎ込む毎日だったのだが、息子の妻のラテコさんに勧められ、杖を片手に散歩を日課とすることにしてからは少しずつ毎日が変わっていった。
思うように動かなくなった足も使ってみれば慣れてくるもので。
10分の散歩が20分。20分の散歩が30分。
と気が付けば、どんどんとその時間が増えていった。
まだ杖と傘を一緒に使おうと思えるほどの自信はないが、このまま行けば雨の日の外出の為に傘を購入する日も近いだろう。
いつしか暗く哀しい日々は明るく楽しい日々に変わっていた。
笑顔が増えたからだろうか。
同居当初の頃はギクシャクとした関係しか築けていたなかった孫娘のカメコちゃんとも言葉を交わす機会が多くなり、彼女が憧れているというシャーロック・ホームズの話を楽しげにしてくれるようにまでなった、最近では散歩から帰ると必ず笑顔で迎えてくれる。
儂はなんて恵まれているんだろうか。
少し感傷に浸りすぎたな。
最近めっきりと冷え込んできたからだろうと自分を誤魔化し、ひとつ鼻をすすって足を進める。
永遠に続きそうなこの濃紺の空も我が家に帰り着く頃には明るくなっているだろう。
明けない夜などないのだから。
【朝の推理とステッキな笑顔】~了~