雄大な大自然を舞台に、大人の男女の恋をドラマティックに描き出した映画、"Just Pretend"が完成した。
ロマンティックなストーリィ、スケールの大きなロケ映像、ゴージャスなファッションと話題こと映画だったが、何より注目されたのは、今や一番の人気と実力、美しさを誇る主演の二人である。
大自然を背景に二人が交わす熱い抱擁は絵のように美しく、そのスティール写真は映画の宣材として見ない日がないほどだった。
今日はその映画のプレミア公演の日だ。
「あのポーズでの決めショット、お願いします!!」
殺到した取材陣からは、当然のごとくレッドカーペットに相応しく着飾った二人にリクエストが飛ぶ。
「この写真は、間違いなく明日のトップを飾るな!」
そして始まった上映。
映画はもちろん申し分のない素晴らしい出来だった。
しかし、主演女優のレミーはエンドロールまで待たずに席を立ち、劇場を後にした。
なぜだろう?
転載元: 「【映像先行NO.4】you'll see me in hindsight」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/10239
相手役の男優が、プレミア公演の会見を恋人と婚約発表の場に使ったから。
私はトップ女優だ。
恋愛ものの撮影中は、相手を本当の恋人だと思い込むのが私のやり方だ。
いや、思い込んでいるのか、本当に恋しているのかは分からない。
そんなことは、演技の完成度に比べたら些細なことだ。
たまには、撮影が終わっても僅かな間お付き合いすることもあるけれど、それは私にとってスピンオフ作品のようなものだ。
今回も例外ではなかった。
撮影期間、彼は私の恋人だった。
彼の私に向ける熱い眼差しからは、彼も同じタイプだと確信できた。
「あのポーズでの決めショット、お願いします!!」
プレミア会見の場でカメラマンがそう叫んだ相手は、私ではなかった。
彼が、私としていたのと同じように熱い抱擁を交わしていた相手は、彼の本当の婚約者だった。
もちろん私は全力で喜び、お祝いの言葉を述べた。
そのぐらい、私の手にかかれば大して難しい演技ではない。
一人、暗いシアターでスクリーンの中の恋人たちを見つめる。
あれだけ封切りが楽しみな作品だったのに、何一つ頭に入ってこない。
彼が、この映画を自分の売名行為に使ったからか?
二人で、スタッフとみんなで、作り上げた作品を私物化したからか?
あんな、人気も実力も美貌も私に劣る、ただ若くてキラキラしているだけの女に話題を持っていかれたからか?
彼の眼差しが他の人に向けられていたことに気づけなかった自分が愚かしいからか?
私は、私が、本当に、本当は、彼のことを…
もうこれ以上心がかき乱されたら、ライトがついた時に笑っていられるか自信がない。
私は、そっと、会場を後にした。
Inspired by: MV “Wildest Dreams” by Taylor Swift