魔法が使えないのに最上級魔法を詠唱する帽子屋。
一体なぜ?
*Q8 kUmaさんのリサイクルです。
転載元: 「【魔法ますか?リサイクル】listen to her radiate her magic」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/9944
*顧客からのオーダーに合わせて、一言一句間違えずに呪文を帽子に刺繍するため。
私はオーダーメードが売りの高級帽子を手がける帽子職人。
顧客のどんな注文も受けるのがポリシーだ。
「いらっしゃいませ…Ah, Madam。」
今日お店に来たのは、うちのお得意様、美しき美魔女ファッショニスタのマダム・カムパネルラだ。
「今日は、仮面舞踏会でかぶる帽子をお願いしたくて。
ハロウィーンなんて、あんな騒がしいものは子供だましだけれど、年に一度ぐらい妖艶な魔女になるのは悪くないと思いません?」
「おっしゃる通りです、マダム。マダムならきっとお似合いでしょう。」
「絵本の魔女がかぶるようなとんがり帽子はエレガントではないわね…艶のある黒のヴェルヴェット…ではなくてシルクタフタのトーク帽に黒のチュール…レース…いえ、張りのあるオーガンジーにしましょう。できれば偏光パールのシェイドがかかったので頼むわ。
ラインストーンを散りばめて…それともグレーパールの方がいいかしらね。
肝心の帽子本体には、魔法の呪文でも刺繍していただこうかしら。金じゃ派手すぎるから、シャンパンよりのオーロラカラーの糸があったらそれでお願い。」
「なるほど、アブダカダブラとかビビディバビディブーとかそういうやつですか?」
「何をおっしゃっているの?私がなるとしたら最上級の美魔女でしょう?当然、一番の最上級魔法を刺繍してちょうだいね。文献で調べて来たの。ちょっと長いけど、これよ。」
そう言うと、マダム・カムパネルラは呪文を書いた紙を渡してきた。
もちろん意味など全くわからない、長い文字の羅列だった。
「はあ…」
「もちろん、一字たりとも間違えてはダメよ。魔力がなくなるから。ふふっ♡」
やれやれ。
大した美魔女もいたものだ。
一字たりとも間違えないよう、私は最上級魔法を詠唱しながら刺繍するのだった。