これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんから聞いた話です。
( 以下、問題文は、青空文庫「ごん狐」本文を参照。最後の一文から続きを記述。)
( https://www.aozora.gr.jp/cards/000121/files/628_14895.html )
兵十は火縄銃をばたりと、とり落としました。青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。
…薄れゆく意識の中、ごんは思いました。
「殺されるのが、おれで良かった…」
一体、なぜでしょうか。
転載元: 「Gon the fox = freaks」 作者: アシカ (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/9605
兵十がごんを撃った日に見かけた、家の中へはいっていった狐。
その狐は、ごんではありませんでした。
そう、その日。 狐は「二匹」いたのです。
…薄れゆく意識の中。ごんは。すみっこで小さく震える小狐を見ながら。
「へっ 何も悪いことをしていないやつが、また、おれのせいで死んぢまったら、おれはもう、おれを許せねぇよ…」
「殺されるのが、おれで良かった…」
と思いました。
ーーーーー
「と、いうわけさ。」
「悲しいお話だね、茂平おじさん。」
私は大きくため息をつきました。一人と一匹がすれ違った末に起きた悲劇。当時の私は、齢(よわい)十(とお)にして、シェイクスピアの四大悲劇に勝るとも劣らない、我が国における児童文学の凄みを、幼心にも感じ取っていたように思います。
ただ、それと同時に私は。
一つの奇妙な「矛盾」にも思い当たったのです。
「…ねぇ、茂平おじさん。」
私は恐る恐る、一つの疑問を口にしました。
「…なんだい?」
こちらに背を向けて、やかんのお湯を、急須に注ぐ茂平おじさん。
ゆらりと、囲炉裏の火が揺らめき。灯りに照らされたおじさんの影が、不吉にも。大きく膨らんだような気がしました。
ゴクリ、と私は唾を飲み込み。問わずには、おれませんでした。
「なんでおじさんは、その話を知っているの?」
「…」
「兵十が贈り物の相談をしたのは、一人だけ、だよね。」
お湯を注ぐ手が、ピタリと止まりました。よく知っているはずの茂平おじさんが、全く知らない他人の様です。いえ、そもそも。
「僕、村の大人から聞いたよ。昔、銃で人を撃って逃げ出した、悪いお百姓さんがいたって。兵十って人と、とっても仲が良かったって。」
目の前の男は、本当に「茂平」なのでしょうか…?
いうな。いうな。いうな!!
しかし。ついに私は、聞いてしまったのです。
「あなたの本当の名前って、もしかして、かすk…」
男の手元で、銀色の刃物が、ギラリと鈍い光を放ちました。
〈終〉