田舎町・海亀村出身のマイアが大都会・東京て暮らし始めて早十数年。
大学生の頃は長期休みの度に帰省していたが、大学卒業後は忙しさを理由にめっきり帰らなくなり、今回の帰省もおよそ十年ぶりだった。
何時間も電車を乗り継ぎ、海亀村の寂れた駅前に降り立つ。
雨上がりの土の匂いの中、十数年前から変わらないシャッターの降りたいくつかの商店と、古びた時計台。
その足元に、珍しく母が迎えに来ていたのを見つけて──マイアはポロポロと涙を溢した。
一体何故?
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※この問題は『Cらて』開始直後に例題として出題しようとしたものの、らてらてで同時出題の権利がなく出題を断念していた問題です。
転載元: 「【Cらて】都会を出てはいけない病【幻の例題】」 作者: 運営部 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/9444
父は、事あるごとにマイアに電話やメールをしては、次はいつ帰るんだとしつこく聞いていた。
今どきメールなんて使わないからというのを口実にほとんど無視する事が多かった。
そうこうしているうちに、父からの連絡の頻度は減り、いつのまにか連絡が来なくなったことに、マイアは気が付いていなかった。
だから、全く知らなかったんだ。
昨日母から、電話が来るその時まで──。
「おかえりなさい」
駅舎から出てきたマイアに、母は静かにそう言った。
ぐしぐしと袖で涙を拭い、ごめんなさいとマイアは小さく謝った。
母はそんな我が娘の頭を優しく撫で、帰りましょうとマイアに促した。
静かに頷き、時計台に背を向けて少し歩いた時だった。
『おぉ、マイア。久しぶりだな。また少し、背が大きくなったんじゃないか?』
マイアは思わず振り返り、時計台の足元で優しく微笑む父の姿が見えたような気がして──また、涙が一雫、頬を伝う。
「成人してるんだから……背、伸びるわけないじゃん」
ポツリと呟き、マイアは再び時計台に背を向けて、少し前を行く母の後を追いかけた。
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***答え***
父の訃報を聞き十年ぶりに帰ってきた海亀村の駅前に、いつも迎えに来ていた父の姿がなかったことで父の死を実感したから。