イアリング以心伝心

妻が隣の部屋で外出の準備をしている。
（たしか、今日は母方の叔母さんに会いに行くと言っていたな）
私はこの叔母さんとは一度会ったことがあるが、妻のお母さんとは会ったことがない。私たちが結婚するずっと前に亡くなったためだ。写真のみで見たことがある義母は美しい人だ。
以前、母親の形見だというエメラルドのイアリングを妻に見せてもらったことを思い出す。付けたことがあるかと聞いたら、それはないと言っていた。
（でも、今日は付けるんじゃないだろうか）

そこまで考えたところで、支度を終えた妻が隣室から出てきて、じゃあ行ってくるわね、と言った。
私はいってらっしゃい、と答えた。
耳に光るエメラルドのイアリングは、妻にもよく似合っていた。

―――――――――――――――
妻が形見のイアリングを付けるのではないかと私が思った理由を当てよ。

私が見せてもらったとき、イアリングは、やはり妻のお母さんの形見であるオルゴールにしまってあった。
オルゴールの曲が隣の部屋から聞こえてきたのでイアリングのことを思い出し、付けていくためにオルゴールを開けたのでは、と推測したのである。