この間おばあちゃんの家の近くを通りかかった時のことです。
おばあちゃんの家の中から、強面の人たちが何人か出てきて、黒塗りのいかつい車で去っていったんです。
僕は慌てておばあちゃんの家に行って、「おばあちゃん!大丈夫!!なんか怖い目にあったんじゃない?」って聞きました。
「ああ、大丈夫だよ…気にせんとき」
「大丈夫じゃないよ!あの人たちは誰!?」
「悪い人ばっかりじゃないから、安心しぃ」
と言われただけでした。
大事なおばあちゃんなんで、心配です。
でも訊いても教えてくれないし。
何があったんだと思います?
一緒に考えてもらえませんか?
*この問題は亀夫君です。主人公に質問して一緒に考えてあげてください。
YES/NOで答えられる以外の質問もできます。
転載元: 「out of the darkness, into the light」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/8994
①おばあちゃんは手先が器用で裁縫や刺繍が得意。
②その技術を生かして、昔ちょっとやんちゃな人たちの制服に刺繍をしてあげていた。
③その中には、今でもちょっとやんちゃな人たちもいる。
④その人たちが、たまたまおばあちゃんの家に悪い人たちが押し入っているところに通りがかり、悪い人たちを片付けてくれた。
⑤なので、車に乗って出て行ったのは、悪い人+(おばあちゃんにとっては)悪くない優しい人たちである。
手芸部部長の篠原速戸の祖母にして手芸の師匠である、道代おばあちゃんは、犯罪とは無縁の、ごく普通の人のいいおばあちゃんである。
…ただ一点、凄まじい裁縫や刺繍の技術を持っているということを除いては。
今から40年ほど前、まだ若かった道代のもとに、スカートが長い女の子と、短い学ランをきた男の子がやってきた。
卒業式で着る制服に刺繍をしてほしいのだという。
「あ。あのさー、俺たち、この服に刺繍してほしいんすけど…」
「見せてみ。どれどれ。あー、サージやな。で、図柄はどんなんがええん?」
「虎と龍…あと、この文面…」
「なになに…この命、咲かせてみせようこの春に…」
「私は桜と蝶、それとこのポエムなんだけど、いける?」
「男なんかになびかない 頑固一徹 友情一途…」
「できそうっすか?」
「やってみましょ。1ヶ月後でええか?」
「あ、ありがとうっす。正直、お店とかでもそんな校則違反の手伝いできないって言われちゃって…」
「別に私の学校ちゃうしw 法律違反は無理やけど、たかが校則やろ? ま、ゆーてもうちのおっちゃん教師やけどなw こっちも刺繍の練習になるからえーねん。」
以後、道代の元には、毎年卒業を控えた、ちょっとやんちゃな子たちが変形学生服の刺繍の依頼にやってきた。
「先輩から聞いてきました!よろしくっす!」
彼ら、彼女たちは意外と義理堅いし、礼儀正しい子も多かった。
支払いは出世払いでいいよ、と言っても、ほとんどの子はためたお小遣いで払ってくれた。
そのうち流行も変わり、そんな制服に刺繍するような風習は廃れてしまったが、その時の子たちとは割と親しく交流が続いている。
すれ違えば挨拶してくれるし、年賀状のやりとりをしたりと交流がある子もいる。
ほとんどの子は真面目になって、勤め人になったり、自分で会社やお店をやったり、いろいろだ。
買い物に行けばサービスしてくれたり、家の工事や修理で便宜を聞かせてくれたり、当時の音を返してくれる子も少なくない。
まあ、中には「本職」っぽくなってしまった子もいるけれど、本当はいい子だってことは道代にはわかっている。
そんなある日、道代の家の前に急に怪しい車が止まり、胡散臭い若者たちがやってきた。
最近流行の闇バイトとかいうやつか。
カード類はどこだ、早く出さないと手続きができなくなると脅しをかけてくる。
電話をかけようにも。電話の前にも一人立っていて電話がかけられない。
そんな時だった。
もう2台、いや3台、またちょっといかつい車がやってきた。
「道代さん!大丈夫??」車の中から、ちょっと派手な金髪の女が飛び出してきて、道代に声をかけて、抱きしめてくれた。
忘れもしない、紫のセーラー服に見返り美人の刺繍をしてくれと頼んできた彼女だ。
そして。引き続いて、強面の「本職」と思しき方々が現れ、胡散臭い若者をひっつかんで車に押し込んだ。
…何人かはやっぱり般若だの唐獅子だの龍だのを頼んできた、見覚えのある子だった。
「道代さんとこに見かけない目立つ車が止まってる、おかしいと思って除いてみたらこんなだし!
…まああたしらも大概だったけどさ。
最近の若い奴らはお年寄り狙うからまじ気ーつけないと。
あたしら、堅気の人たちみたいに何かしてあげられることはあんましないけど、なんかあったら呼んで!」
そう言って、一団は帰って行った。
「…ってことやねん。」
「ってことやねん、じゃねーし。ちゃんと警察言った?」
「せやねえ…でも、後から来てくれたあの人たちが捕まんのも悪いし…ほんまは悪い人ちゃうねんで…」
「ま、基本は犯罪防いでくれたんだから、別にその人たちが捕まることないんじゃん?もしかしたらそのあとでボコったりしてるのかもしれないけどw、それはそれだし。」
「まあ、せやねえ…速戸にも心配かけて堪忍な。」
「ま、無事でよかったけど。ってか、おばーちゃんにそんな知り合いいると思わなかったwすげえ。」
「ああ、あんたがずっと通ってる空手道場のケンさんとかもその繋がりやで」
「え、まじで?」
「あと美容院の千春さんとか、いつも布地とか糸とか安う分けてくれる武志さんとか、みんなそやで。」
「知らなかった…おばーちゃんすげえ。」
「まあ昔からゆーやろ。芸は身を救う、ちゅうてな。あんたも『みーね』だか『くりーな』だかいうとこでぎょーさん売ってるそうやな。ええこっちゃええこっちゃ。ぎょーさん稼いで、美咲ちゃんに可愛いお洋服でも買うたれ。それがあんたが作ってやり。」
「あ、それで聞きたかったんだけど、おばーちゃん、ジャケットのこのライン、もうちょっとステッチで立体感出したいんだけど、どうすればいい?」
「どれどれ、あーそれな。ちょっと貸してみ!」
篠原速戸:海亀高校手芸部の部長で、将来はアパレルデザイナーを目指している。手先がめっちゃ器用。水平台学園中等部3年の美咲の彼氏。
篠原道代:篠原くんの祖母にして、手芸の師匠。言葉からして、関西出身らしい。
おっ
2023年8月16日 21:59
篠原くんの手芸の師匠。その正体はピアノ線を武器とした伝説の暗殺術の使い手。ちなみに誰も殺したことは無い。