風がひどく強いある秋の日に撮られた写真をきっかけに、ヅラ疑惑が広く噂されていた望月の疑いは払拭された。
しかし、その後、「妻一筋だった望月に他の女性がいる」という、よりインパクトのある噂が広まってしまったという。
どういうことなのだろうか。
*百人一首 その七十九【あきかぜに たなびくくもの たえまより もれいづるつきの かげのさやけさ】からのinspireです。
転載元: 「el viento soba tu cabello」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/8757
*それは望月の亡き妻の墓前の写真。
三脚も立てられないような風の強い日にその写真があるということは、誰かと墓参りに行った可能性が高い。
わざわざ亡き妻の墓に一緒に行くのは、「妻に紹介したい人」ではないか、という噂が立った。
「おい望月、お前、何の写真見てるんだよ」
「あ、別にいいだろ、そんなん」
「お墓…?あ、美也子さんのか」
「そうだよ。先週末、台風来ててすごい風強かったけど、お彼岸だし、毎年行ってるからな。おい、何見てんだよ」
「あ、ああ…」
「だーかーらー、言ってんだろ。俺はヅラじゃないって。
ヅラだったら、あんな強い風の日にこんな写真撮れるわけないだろ?な?」
「ま、まあ、それはそうだな…」
「…どうしたんだよ」
「いや…お前、ヅラ疑惑証明するためにわざわざ写真撮ったわけじゃないよな?」
「当たり前だろ。そんな写真撮ったら逆にやましいところがあるって思われるだろがw」
そう、先週末は確かにあの日はすごい突風だった。
とてもじゃないけど、ヅラだったら不安だろう…しかし、それ以上に三脚なんて立てておけない。
っていうか、墓参りの写真なんて普通三脚立ててまで撮るか?
穏やかな日ならともかく、わざわざあんな台風が近付いてる日に。
ということは、誰かこの写真を撮った人がいる。
望月と亡くなった美也子さんの間にはお子さんはいなかった。
そして、美也子さんのご実家は確か遠方だったはずなので、あんな荒天の日にあえて一緒に行くとは考えがたい。
一緒に行く可能性があるとすれば、それは…美也子さんに紹介したい人なんじゃないだろうか?
…そして、その噂はあっという間に社内で広まった。