ジゴスリーブのクラシカルドレスを着て、波打ち際で倒れている貴婦人。
カフスが濡れるのもお構いなしだ。
なぜ彼女は倒れているのだろう?
*百人一首 その七十二【おとにきく たかしのはまの あだなみは かけじやそでの ぬれもこそすれ】からのinspireです。
転載元: 「standin' in a nice dress」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/8645
*別に助けるのが女性だった可能性だってあったはずだ。
びっくりした。ここはどこなんだ。
…いや、海底にあんな場所があるなんて思ってなかったから、それに比べたら驚かないけれど。
ここは明らかに地上だし。
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気付くと私は多くの人たちに囲まれていた。
言葉は、2割ぐらいしかわからないけど、多分、日本語なんだと思う。
年配の人の言葉の方が、なんとなくわかるように思えた。
「素敵な袖のお召し物ですね。」
かろうじてそんなことが聞き取れた。
…しばらくして分かったのだが、どうやらここは、150年ぐらい後の世界のようだ。
まあ、理由はわからないが、海の中でも私は生きてこられたんだ。
何が起きたって不思議ではない。
私は、「女に生まれたのだから、周りには大人しく従え」と言われて育って来た。
だから、ここの決まりや慣しは素直に受け入れて生きていこう。
この時代の言葉を覚えるのも楽しいかもしれない。
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慣れてくると、この時代も意外と楽しいものだ。
何より、この時代の女性はあまり周りに気を遣わなくてもいい。
言葉も、完璧にではないが、いつの間にか馴染んでしまった。
暇を持て余したので、得意の裁縫で舶来風の洋装を仕立てたところ、「クラシカルで素敵」と好評を博している。
この私が職業婦人になるなど、思っても見なかった。
「困ったことがあったらこの箱を開けてみなさい」海の底で出会った、あの美しい殿方はそう言った。
しかし、そう簡単に殿方の口車に乗るなどというのは、はしたないことだとしつけられてきた。
いくらこの時代に馴染みつつあるとはいえ、三つ子の魂百まで。
そう簡単に変わるものではない。
だから、こんな箱は処分してしまおう。
そもそも今の暮らしに満足している。
今後困ることなど、ないだろう。
しかし、それにしても、私の身の上にはどうしてこんなに不思議なことばかり起きるんだろう。
最初は海、その次は未来。
今度は月にでも行くのかもしれないな。
確か、西洋のお伽話には、兎と亀が登場する話もあったではないか。
亀を助けて、最後は月の兎に会いに行くのも、悪くない。