「おいこらてめえ、金出せや!」
凄い形相で睨む男に対して、
「はい、どうぞ!」
と私はニコニコ笑顔で10万円をポンと差し出した。
なぜ?
*Q2 ノーキンさんのリサイクルです。
転載元: 「【金ますか?リサイクル】dale, que la cosa está rica」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/8608
*オーディション、優勝。
ここは、「21世記の亀原金次郎を探せ!コンテスト」の最終オーディション会場である。
昭和の名優と言われた亀原金次郎。
その跡を継ぐような、演技力・容姿・知性・人柄を持った俳優を探すためである。
優勝者には賞金10万円と副賞のトロフィーが受容される。
賞金が少ないって?
カネなどには左右されない硬派な俳優を探すというのが名目ではある。
しかし、このコンテストの優勝者は、大ヒットとの呼び声間違いなしのゾンビ映画の主演のオーディションも兼ねている。
そのギャラ1億円は、もちろん別枠だ。
当然、大手事務所である当社ウミガメ・エージェンシーとの永年契約も確定しており、今後の俳優人生も安泰だ。
さて、このオーディションの最終課題は、悪役の演技だ、
亀原金次郎は、爽やかなスポーツマンからアウトローまで、どんな役柄でも演じていたのだ。
男は、向こうから肩を怒らせながら歩いてくると、肩がぶつかった相手に、
「おいこらてめえ、金出せや!」
と凄い形相で睨む。
本職のヤクザでも怯みそうな迫力。
冷酷で金のためならなんでもやるという凄み。
しかし、その背後には、不遇な人生の中、こうでもしなければ生きてこられなかった男の悲哀が、僅かながら垣間見えた。
このセリフと短い演技にこれだけの感情を込められるとは。
間違いなく優勝だ。
「優勝です。次代を担う新しい俳優として、我が社ウミガメ・エージェンシーを支えてください。」
私がニコニコ笑顔で10万円を渡した男は、先ほどの悪役の演技と同一人物とは思えないぐらい爽やかな笑顔で、輝いていた。