父の遺品整理をしていた娘は、父が死ぬ日まで時折、父の所持していた黒い携帯電話に、誰かから着信があったことに気づいた。
好奇心から着信履歴を見ると、父が所持していた電話と全く同じ携帯番号から着信があったようだ。
いったいどういうことだろう?
*Q9 kUmaさんのリサイクルです。
転載元: 「黒ますか?リサイクル】I’ll never talk again」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/7975
*恋人に貸したもう一台の携帯電話から、着信が入っていたから。
父は携帯電話を二つ持っていた。黒い携帯電話と、赤い携帯電話。
そのことについて、特に気にすることもなかった。
仕事用とプライベートなどで、二つ携帯を持つ人だって普通にいるし、正直なところ、そこまで父のことに関心はなかった。
今思えば、ある時から赤い携帯電話の方はあまり見ていなかった。
どうやら、それは、ある女性に貸していたらしい。
相手の女性に経済的な援助をできるほど裕福だった父ではないが、せめて携帯電話代ぐらいは出してあげたかったのだろう。
…母が亡くなってからもう10年にもなる。
なぜ父がその人のことを黙っていたのかはよくわからないが、相手の女性も遠慮していたのかもしれない。
着信履歴を見ると、死の間際まで、頻繁に電話がかかっていた。
それに比べて、私たち子どもからの連絡は、ごくわずかだった。
赤い携帯電話は、程なくして私の家に送られてきた。
私たちへの気遣いを込めた柔らかく上品な筆跡の手紙と、良い香りのお線香とともに。