65歳の真理絵は、自他共に認める美魔女です。
なんと、そんな真理絵のもとに、本物の魔女がやってきました。
「おやおや、お悩みの様子だね?私は魔女のアリスじゃ。
お前の願いを3つ叶えてやるよ。
ただし、他の人を傷つけたり、他の人に直接影響を与えるような願いはダメだ。
そして、何か一つは失うことになるぞ。
なあに大丈夫、そんなに影響を与えるものは奪わない。
私は良い魔女だからな。ほっほっほ。」
真理絵は少し考えて、こう答えました。
「そう…だったら、まずは永遠の若さね。いつまでも若く、美しく、健康でありたいわ。」
「なるほどねえ。そうかそうかあんたもあたしほどじゃないが、綺麗だもんねぇ。」
「あとは…やっぱりこの年になると死ぬのが怖いの。永遠に生きているのもそれはそれで不安だけど、死の恐怖からは解放されたいわ。」
「死の恐怖…まあ人間とは大変なものよのお。」
「それと…」
真理絵は、ベッドで寝息を立てて眠っている夫の勇二を見つめ、こう続けました。
「ずっと、新鮮な気持ちでこの人を愛していたいの。恋人時代みたいにラブラブにね。」
「なんとかが二人を分かつまで、というやつか。結構なこった。じゃあ魔法をかけるぞ。
後悔はせんな?ちちんぷいぷい!!」
そう言うと、魔女は真理絵にその3つの願いを叶える一つの魔法をかけました。
その魔法のおかげで、真理絵は老いることもなく、死の恐怖に怯えることもなくなりました。
そして、二人が会えなくなるその日まで、真理絵は、新鮮な気持ちで夫を愛し続けることができたのです。
さて、魔法使いはどんな魔法をかけたのでしょうか?
*扉問題ですが、一語一句そのものである必要はありません。どんな魔法であるか当てていただければ結構です。
また、質問数制限はありません。
*百人一首 その五十四【わすれじの ゆくすゑまでは かたければ けふをかぎりの いのちともがな】からのinspireです。
*一応元ネタがある…のですが、だいぶ昔のことで忘れてしまっているので、もしかしたら全然違う話だった可能性もあります。
*この問題は、kUmaさんのSPを受けています。
kUmaさん、どうもありがとうございました!!!
転載元: 「live while we're young」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/7877
1日1日遡っていく(毎朝起きると前日になっている)魔法。
(元ネタ:清水義範『グローイング・ダウン』)
2025年8月4日
「なんか具合が悪いんだ。病院に行こうと思う。」
「あらそう?一応診てもらったらいいかもね。」
朝食の席で、夫と会話した。
私が、毎日を「遡る」ようになってから、もう半年ちょっと経つ。
今日病院に行くと、ガンが発見される…はずだ。
でも、「昨日」には、何の健康不安も無くなっているだろう。
夫がもう余命わずかだと知ったあの日。
なぜか私の元にアリスとかいう魔女がやってきた。
夫のガンを治してください、というお願いができたらどんなに良かったか。
なのに、なぜか直接他人に関する願いは叶えられないと言う。
それならば、と言うことで、願った結果がこれだ。
私は毎日、目覚めると前日に戻るようになった。
「未来」の記憶は、全くなくなるわけではないけれど、どんどん薄らいでいく。
これが願いを叶えることの代償ということか。
そもそも何のガンだったっけ。
あの日は何日だったっけ。どこの病院だったっけ。
まあ、そんなことを忘れてしまったってかまわない。
そうか…でも私はいつか勇二と「出会う前の日」を迎えることになるのか。
出会った幸せな日の直後にやって来る、この人がいない人生。
そして、死の恐怖はなくなったけれど、私は、いつの間にか、記憶そのもの、意識そのものを失い、無邪気な子供に戻って、最後には世の中に存在しなくなる。
いや、そんなのはまだ何十年も先…というか何十年も過去のことだ。
それまでは、思い煩うことなく、楽しく生きよう。
2020年3月31日
私たちは同じ日に定年退職した。
これからは、趣味に熱中したり、二人で一緒に旅行したりしたいと思う。
未来の私たちは、あちこち行った…と思う。
北海道、京都、香港、ドバイ、ニューヨーク、バルセロナ…には行ったかなあ。
あの綺麗な海…は石垣島?ハワイ?タヒチ?モルディヴ?どこだったっけ。
2002年11月8日
ひどい。ひどい。ひどい。問い詰めたら、浮気を認めた。
もう二度とするな、って泣いたら、土下座して謝った。
なんか過去の私はそれを疑わしく思ったから、問い詰めたんだろうけど、それはわからない。
ただ、今後こういうことはなかったんじゃないか…と思う。よく覚えてないや。
嫌なことなんて、忘れちゃった方がいい。
1990年10月11日
嬉しい。
母親になると言うのはこんなに嬉しいものだったのか。
いや、本当はこの子が反抗期を迎えたり、受験に失敗したり、失恋して泣き喚いたり、いろんなことがあった…ある…のかもしれない。
でも、多分、この日の幸せを覚えてるから、私はやっていける。やっていけたんだろう。
たとえ、この子が今日の日のことを覚えていないとしても。
1985年6月8日
なんて幸せなんだろう。
私、自分でいうのもなんだけど、すごく綺麗だw
こうして、この人と一緒に一生幸せでいられる…んだと思う。
多分、辛いこともあるのかもしれないけど、未来の記憶なんて忘れてしまった。
1980年9月13日
一目惚れだった。
友達の紹介で知り合った勇二。
絶対私たちは結婚する。一生幸せに一緒に生きていく。
そういう確信があった。
…って友達に言ったら、何言ってんの、みんなそういう思い込みするんだって、って馬鹿にされた。
そんなんじゃない。絶対、そういう未来が見えるんだ…
でもその根拠はなんだろう。未来の記憶があるみたいに思うんだ。
昨日は、この人のこと知らないなんてね。そんなのありえない。
そのぐらい勇二は私の全てだ。
1980年9月12日
「ねーねー 誰か男の子紹介してよ〜〜」
「わかったよ 私の彼の友達でフリーの勇二って子がいるんだけど、明日連れてくるね。」
「本当に?いや、なんかそろそろ次に会う人が一生の相手になりそうな気がするんだよねー」
「はいはいw 恋する乙女の妄想、ってやつだね。」
1977年5月26日
「…ねえ、今日の科目何だったっけ?」
「はあ?まりっぺ時々ボケたこと言うよね。今日は木曜だから、古文、数学、家庭科が食物で二コマ、午後から体育、世界史だったでしょ?」
「うっそ…体育着も割烹着も持ってきてる気がしないんだけど…」
「もう5月だよ?いい加減時間割覚えなよ。」
「…なんか私、時々思うことがあるんだ。今こうして女子高生をしてるのは、幻なんじゃないかって。
私は、本当はもうおばあちゃんで、これが夢なんじゃないかって。
なんだか、大学に行って、就職して、結婚して、子供産まれて、幸せな一生送った記憶があるんだけど、私。」
「おかしいおかしいwそんなわけないじゃん。」
「…そうだよね。私どうかしてた。あ、1時間目古文か。」
「そうそう。百人一首の小テストあるよ?覚えてる?じゃあいくよ?下の句言ってね?『わすれじの』。」
1963年7月14日
「ハッピーバースデー、真理絵!この子も3歳か。大きくなったな。」
「そうね。こんな賢い3歳児いるかしら?」
「…さすがにそれは親バカだろう。」
「でも、なんだか大人の言葉も、未来のこともわかっているかのような顔をすることがない?」
「それは思い過ごしだろうよ。確かに頭は良さそうだけどな。」
「まあ、そんなことはどうでもいいわ。きっと今日のことなんて記憶には残らないんだろうけど、どうかこの子の一生が幸せなものでありますように。」
「ああ、本当に。」