【分けますか？リサイクル】I'll be in my castle golden

あたしたちは別にお金に困ってない。
みんなそれなりに仕事で成功してるんだ。

もちろん普通に法律で決められた分のおばあちゃんの遺産は手に入ることになってる（し、それはちゃんともらうけどw）、形見分けについては孫それぞれが自分の好きなものを持ってくことにした。

おじいちゃんの会社を引き継いだカメミ姉さんは、当然会社関係のもの。

世界的なテノール歌手のカメオ兄さんはおばあちゃんのコレクションの貴重なレコードと音響機械と楽器。

いとこでデザイナーのウミコちゃんは、ドレスや宝石。

建築家のラテオは家具とか調度関係。

弁護士のラル子お姉さん、医者になったテラミ、ベンチャー企業起こしたシンタくん、みんな自分の仕事や趣味に関係のある好きなものを持っていった。

あたしは、CAを辞めて、世界中、日本中を飛び回るトラベルライター兼インフルエンサーをやってる。
不思議なことに、あたしのきょうだいやいとこは、みんな旅行が好きじゃない。
（レストランオーナーの旦那もだ）
思えばおかあさんやおじさん、おばさんもそうだ。

だから、あたしは、おばあちゃんの旅行好きをたった一人受け継いだ孫って言われてる。

おばあちゃんは、まだ海外旅行なんてしてる人が少ない時代から、バックパッカーのはしりだったらしい。
病気で動けなくなるまで、あちこちを一人で旅していた。

かっけー。

だからあたしは言ったの。

「このレシートもらっていい？」

このスクラップブックは、おばあちゃんが世界中を旅して回った思い出。
ただの紙切れに見えるかもしれないけど、買ったもの、行った場所、食べたもの。
おばあちゃんにとっては誰にも譲り渡したくない自分の大事な記憶。

あたしも同じことするからわかる。

おばあちゃんの足跡、辿って回るからね。

本にしたらちょっとはお金になるかもしれないけど、でもそんなことは大事じゃないの。
見ててね。おばあちゃん。おばあちゃんの見てきた景色、全部見てくるからね。