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ドア・トゥ・ドア

[ウミガメのスープ]

男は転職後、悩みを抱えている。
その一つが、前よりも通勤時間がかなり長くなってしまったことだ。
まず最寄り駅までが遠いうえに、満員電車をいくつも乗り継がねばならない。

実は、男の家からすぐに乗ることができる、格安公共交通機関がある。
男がその気になれば、それに乗って目的地まで行くことができる。

男も、何度かそれを利用しようと考えたことはあるのだが、
今朝も男は歩いて駅へと向かった。
なぜだろう?


出題者:
出題時間: 2022年8月24日 21:45
解決時間: 2022年8月24日 22:02
この作品は
CC BY-SA 4.0
の下で公開されています。
転載元: 「ドア・トゥ・ドア」 作者: 丼 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/7817
タグ:

【解答】

今はまだ乗るべき時ではない、と思えるから。


【解説】

なぜ、今朝も目覚めてしまったんだろう。

アラームの音は、いつから僕を責めたてるようになったのだろうか。
この床は、もしかしたら僕にだけ冷たいのだろうか。
埃を被った懸垂棒は、なぜあんな高いところにあるのだろうか。

この六畳一間の鳥籠の出口は、すぐそこにある。
あれにロープを一本かければいい。ネクタイでは心配だ。
ほんの数秒我慢すれば、僕の前に一艘の舟が現れる。
運賃は六文。たった200円で、僕をここから運び去ってくれる。
わかってる。わかってる、けれど。

こんな僕でも、まだ求めてくれる人がいるなら。
そして、僕が少しでも満たされたいと願うなら。
名前しか知らない貴女が、同じ世界で生きているなら。
この世界にもう少しだけ、期待してみよう。

視線を下ろし、定期券を手に取って見つめた。
印刷された文字は掠れていて、今にも擦り切れそうだった。


出題者:
参加するには または してください
パトロン:
アシカ人参
と 匿名パトロン 3 名
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Cindy