サッカーが大好きで、クラスでも割と目立つ、ちょっとやんちゃめの健斗。
授業中はいつも寝ているし、勉強なんてしそうにないタイプ。
教科書や副読本を忘れてくるなんていうのも日常茶飯事で、よく借りたり見せてもらったりしている。
そんな健斗は、誰にも知られないように、隣のクラスのさくらの所にこっそり本を借りに行くことが多い。
健斗は他のクラスにも友達がたくさんいるのに、どうしてあまり目立たない、大人しいさくらの所に借りに行くのだろう?
*百人一首 その二十五【なにしおはば あふさかやまの さねかづら ひとにしられで くるよしもがな】からのinspireです。
転載元: 「I, I don't wanna let you know」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/7155
さくらが図書委員だから。
私は逢坂さくら。本が好きなので、図書委員をやっている。
人の少ない木曜日の放課後、珍しい生徒がやってきた。
「健斗くん?図書室に来るなんて珍しいね?」
「なんか植物の本とかある…ちょっとおじいちゃんの盆栽割っちゃって、あれ、なんて木なんだろう。…ああ、これこれ、サネカズラ?」
「綺麗な実がなるんだよ。昔の和歌に出てきたりもするんだ。」
「へえ…お前よく知ってるな。」
「…ごめん。余計なこと言っちゃって。」
「勉強できるのっていいよな。でも今更勉強なんて恥ずかしいし。」
「別にいいじゃん。この時間そんなに図書室人いないから。サッカー部ないとき遊びにきたら?」
サッカー部の人気者の健斗くんにこんなふうに話すなんて、図々しいと思われなかっただろうか。
私は、書架の整理に戻った。
健斗くんがまた図書室に来るなんて期待してなかった。
でも、驚くことに次の木曜日もやってきた。
「図鑑も面白かったけどさ、この間言ってた和歌?とか歴史?の本とかもある?結構本読むのも面白いかも、って思ってさ。でも、俺のキャラじゃねーよな。」
「いいじゃん。ギャップ萌え、いい感じだよ。これからも、こっそり木曜日に借りにきなよ。木曜日は私の当番だし。」
その後も、毎週健斗くんは本を借りに来るようになった。
友達に見られないようにこっそり入ってきて、ささっと借りていくのが可愛い。
でも、誰もいないとわかると、結構私と話なんかもしてくれる。
そういえば、健斗くんはやっぱり目立つタイプの夢花ちゃんが好きだったみたいだけど、最近夢花ちゃんは拓海くんと付き合ってるみたい。
今度恋愛小説とかも勧めてみようかな?