今までたくさんの星を宇宙船で回ってきた。次はどんな星に行くのか。ロマンチストであるカメコの胸は高鳴る。・・・
夢から目が覚めたカメコ。周りを見渡すと無機質な部屋が広がっている。体の節々に痛みを感じ、思うように動かすこともできない。
その眼には、彼女が見知らぬ男が映る。カメコは問いかけた。
「あ、あなたは一体誰でしょう?」
男は不敵に微笑み、彼女に語りかける。
「ほっほっほ。ではお前に見せたいものがあるぞ。」
そう言うと男は彼女の目の前でこなれた手つきで簡単なマジックを披露し始めた。ぱっと男の手から出現したのは一輪の花である。
カメコは花を見たその瞬間、自身が孤独の中死ぬことを理解し、涙を零した。
一体それはなぜか。
転載元: 「魔術」 作者: Duffy (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/6424
老婆カメコは起きると病院のベッドで寝転がっていた。どこかに体を当てた覚えもないのに体が痛く、だるい。
目の前に移ったのは彼女が知らない老人。語り掛けると老人は慣れた手つきで一輪のバラを彼女に見せつけた。
思い出した。彼女がバーで働いていたマジシャンに一目ぼれしたこと。いろんなマジックを披露してくれたこと。ロマンチストであるカメコにと、一輪のバラを目の前に出し、プロポーズしてくれたこと。
それは紛れもなく、今日彼女と金婚式を迎える彼女の夫であった。
人生で最も大事な人を忘れ去ってしまった彼女が、もう覚え続けられる人などいない。カメコはこのまま認知症が進行し、誰からも知られず孤独の中で死ぬことを嘆いた。
「君が忘れたら、このバラで何度も思い出させてあげよう。それが愛というものだろう?」
(Uranus-魔術/惑星シリーズ⑦)