以下はバレエダンサーであるユミの自叙伝である。
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下駄箱に大切そうにしまわれているこのバレエシューズ。私が愛用していたたくさんのバレエシューズは、私が歩んだ波乱万丈の人生といつも共にあった。
親がプレゼントしてくれたシューズを履いた時の高揚感は今でも覚えている。それが私のバレエ人生の始まり。
その後、私はたくさん初めての出来事を経験した。
初めて失敗した日は最初の発表会。途中で転んで、悔し泣きしたな。友達に追いつこうと初めて必死に頑張った時。初めてバレエを極めていこうって決めたときも。コンテスト直前の緊張感も。
そして今後一生忘れない、大切な出来事だって。
挫折し、一人泣いたこと。あの日のリベンジをしたこと。演技の後、友達のみんなが心温かい拍手をくれたこと。お父さんがバレエの継続を励ましてくれた時も。コンテストが失格になっても、前を向こうと決めた日のこと。
プロって認められた日のこと。
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今まで数々のステージに立ってきた彼女であるが、彼女がそのシューズと共に過ごした経験の中で、最も印象に残っている場面において、彼女はステージ上にはいなかった。一体どういうことか。
転載元: 「飛翼」 作者: Duffy (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/6401
この自叙伝に書かれた出来事は、回想開始からすべて時系列順に描かれている。よって、彼女の最も印象に残っている場面は、「今後一生忘れない、大切な出来事」の部分であると推定できる。
…高校2年。努力の結果を示すコンテストの日。私は緊張と共に舞台袖に立っていた。「必ず成功する。」そう唱えて掌に人の文字を三回書いて、飲み込んだ。
いよいよコンテスト開始。その時だった。「ユミさん!!!」スタッフが私に知らせたのは母の訃報であった。会場前で車にはねられたらしい。
トウシューズのまま病院に駆け出した。ベッドに横たわっていた母は、もう息をしていなかった。これからどうすれば。舞台上で客を沸かせるはずだった時間に、私は一人泣きはらしていた。
こうして私の心に残って消えない思い出は、病院の中で起きたのであった。
後日、私は舞台で一人踊った。コンテストで母に披露するはずだった演技を。できなかった舞のリベンジを。それを見てくれていた父、そして駆けつけてくれた友達たちに励まされ、今の私がいる。
だから「この」バレエシューズだけ、残しておく。母が与えてくれた。父が支えてくれた私の人生を、一生忘れることなんかないだろう。…
解答:コンテスト直前に母親の訃報を聞き、病院で母親の遺体を見たときが最も印象的であるため。
(Mercury-翼の使者/惑星シリーズ②)