【酒ますか？オマージュ】thinks that I am unforgettable, too

「俺、酒辞める。絶対辞める。金輪際辞める。」
今日も今日とて無様に酔い潰れながら宣うカメオを前に、ウミコは「あ、はい、さいですかー。」と冷ややかな目で見てきた。
これまでカメオは酒のせいで痛い目を見ては冒頭の発言をして、その次の日には酒に手を出してきたのだろう。上司にケンカを売ってクビになった日、寝タバコが原因で家が火事になりかけた日、長女が生まれたその日に泥酔しててろくに立ち会えなかった日。いつだってそうだ。
「酒飲みって人種は、どうしてこうなんだろう。あたし、旦那にする人を間違えた。絶対間違えた。」ウミコはそう思うことさえあった。
ところがある朝、カメオに「俺、酒辞めるわ。」と言われたウミコは、「あ、今度こそは本当に酒を辞めるんだろうな。」と信じたという。

＊Q17 ZENOさんのオマージュです。

：娘のウミコの結婚式のために、禁酒する父カメオ。結婚式の朝に、禁酒を誓うが、ここまでがんばってきたのだから、もう大丈夫だろうと思うウミコ。

夫になる人には言い出せなかった。父のカメオがグダグダのアルコール依存症だなんて。上司にケンカを売って仕事をクビになったり、小さい頃から家を火事にしかけたり。私が生まれた日も泥酔してろくに立ち会えなかったというじゃないか。でも一番許せないのは、母が倒れた日にも飲み歩いていたってことだ。父が母を殺したも同然だ。私は、父の顔を見るのも嫌で、しばらく祖母の元で生活していた。大人になってからは時々父の元にも顔を出すようになったが、相変わらず酒は飲んでいるようだ。酒をやめると言ってはやめない父に半ば呆れていた。

まあ、言っても私の方も父の元を出てからそんなに褒められた生活をしていたわけではない。高校を中退してからは、いわゆる夜の仕事を転々とし、その日暮らしの毎日だった。結局父親みたいなろくでなしに捕まってパッとしない人生を送るんだろうな、と思っていた。そんな私がありえないような男性と知り合った。きちんとした会社員で、いわゆる「良いお家」の育ちである。父のことは言い出せなかった。あんな飲んだくれ、ラテオさんには紹介できない。

「っていうことで、私結婚が決まったけど、結婚式には呼ばないから。」
「はあ？」
「こんなグダグダの飲んべオヤジ、こられたら困るのよ。長期入院してることにしてるから。死んだことにしてないだけマシと思ってよね。」
「俺は、お前の、ウエディングドレス姿を見ることだけを心の支えに…」
「何言ってんの？お母さん見殺しにしといて？これから半年後の式まで、一滴も飲まなかったら認めてやるわよ。」

流石に言い過ぎたか。そもそも私がこんなちゃんとした人と結婚することが間違いだったのか。旦那にする人を間違えたのかもしれない。こんな家庭で育った私が幸せになって良いわけがないんだ。と悩み続けた。

半年後、結婚式当日の朝、式場には、見た事もない父の姿がそこにあった。こざっぱりとした姿、健康的な顔色、すっきりした体つき。本当に酒をやめていたんだ。借り物なのか、健康的な生活の成果かわからないが、スーツは少し窮屈そうに見えた。
「もう、俺酒やめるわ。」
「わかったわよ…」ここまで半年間頑張ってきたんだもの、きっと大丈夫。今回だけは信じてあげよう。ウミコはそう思った。

＊https://www.cindythink.com/puzzle/5490　の後日談をイメージしてみました。