パァン!
予想外の銃声が後ろから響き、俺は立ちすくんだ。
銃を持った男が俺に向かって止まれ、と言っているようだ。
だが、頭が真っ白で理解が追いつかない。
俺は仲間の男に腕をつかまれ、元いた場所に引き戻された。
うまくいったと思ったのに、完全に失敗した。
呼吸が乱れ、脈動が身体を揺さぶり、震えさせる。
逃げたい。今すぐここから逃げ出したい。
俺はあきらめず、再び必死に走った。
銃を持った男を、たちまち数十メートル後方に置き去りにする。
しかし、俺は追いかけてきた仲間の男に追いつかれた。
後ろから組みつかれた俺の顔には、満面の笑みが浮かんでいた。
なぜ?
転載元: 「あと一歩が逃げていく」 作者: 丼 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/5129
「落ち着け」
俺をスタートラインに引き戻した同じ紅組のウミオが、小さく言った。
俺の顔から余計な血の気が引き、すっと力が抜ける。
「すまん」
再び姿勢を落とすと、まっすぐに50m先のゴールを見すえる。
パァン!
再びの号砲に反応して、脚が地を蹴り、全身が跳ね飛ぶ。
フライングを告げる二発目は聞こえない。
俺は必死に腕を振り、脚を上げて走る。
そして、ギリギリで追いついたウミオと並んでゴールにもつれ込んだ。
『――只今の結果は、1位紅組、2位紅組です』
「お疲れ!ワンツーフィニッシュだな!」
肩を揺らしながら、後ろからウミオが抱きついてきた。
俺の顔からも、思わず白い歯がこぼれた。
(※注 小学生の徒競走です)