カメコは、目の前の女がスマホで恋人にメッセージを送っているところを見て、(器用な女だ…私にはそんなことできないな)と思ったが、それと同時に、1年前の自分ならそんなふうに思わなかっただろうなということにも気付いた。
どういうことだろうか?
*若干要知識な部分があるかもしれません。
転載元: 「I'm not that chained-up little person still in love with you」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/5127
2020年5月。
外出規制は敷かれていたが、カメコの職種では出勤は避けがたい。世の中にはそういう人が他にも多いのだろうか、帰宅時の電車は意外に混んでいた。
立っていたカメコの目の前の座席に座っていた女が、バッグからスマホを取り出して操作を始めた。カメコの目は、その女の華やかな指先に釘付けになった。カメコもネイルは好きな方で、こんなことになるまでは毎月サロンに通っていた。でも、4月になってからというもの、どこのサロンも営業自粛が決まった。それから1ヶ月が経ち、今やカメコの爪は、ほとんど手入れされていない。一方、目の前の女の爪はたった今施されたかのような美しいアートで飾られていた。カメコは、
(え、すごい…サロンはやってないはずだから、自分でやったんだよね。私には絶対無理。めっちゃ器用!)
感心すると同時に、
(去年だったらどこのサロンでやったんだろうぐらいしか思わなかっただろうなあ…早く元の日常が戻りますように。)
と思ったのであった。