ここまで来るのは長い道のりだった。逆瀬川は、雪が散らつく車窓の外を見ながら、ここ3年間の仕事を振り返っていた。
A社との提携で行うビッグプロジェクト。うまくいけば互いにとって利益になることは明らかだったが、お互いの信じるところの違いから、対立することも多く、何度も決裂しそうになっては休戦し、という状況を繰り返してきた。
でも、それも今日で終わる。A社の代表と署名を交わせば、契約成立だ。年内に、クリスマス前に片がついて本当に良かった。A社に向かう逆瀬川の足取りも自然と軽くなる。
まだ打ち合わせまではしばらくある。資料に目を通しておこう。コートと荷物をあずけ、ゆったりと一息つく。アタッシェケースから資料を取り出し、逆瀬川は資料に目を通し始めた。
その後、契約も無事終わり、早く職場に戻って報告しようと足取り軽く帰途に着いた逆瀬川だったが、電車を降りたところで、不測の事態に見舞われ、愕然とした。そして、しばらく出勤できない事態に陥ったという。
何があったのだろう?
転載元: 「Moon Light, Starry Skies, Fire Birds」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/5062
羽田in、成田out。預けたコートが取れない。
[解説]
国際協力機関で働く逆瀬川雲雀は、南太平洋の島嶼国の開発支援を手掛けている。パートナーはオーストラリアシドニーに本社を置くブルータートルコーポレーションだ。今回シドニーに出張し、相手国も含めた三者間で署名すればこれで一段落*だ。
« Dragon night, Dragon night »*
羽田空港国際線ターミナル駅で電車を降りる。向こうの季節に合わせてダウンコートの下は半袖のドレス1枚だ。さすがに今日は少し冷えるが、飛行機に乗るまでのことだ。冬場の南半球出張ではいつもそうしているように、コートは空港に預けた。そして、スーツケースをカウンターに預けると、出国手続きを行い、飛行機の座席に腰を下ろして、仕事の書類を広げた。
〈シドニーにて〉
無事仕事も終わった。さて、アシスタントの御影へのお土産も買ったし、ちょっと早いけど地下鉄で空港行くか…
…え、なになに?東京行き遅延?っていうか、「羽田空港近辺大雪のため、目的地成田空港に変更」って!?
成田到着真夜中じゃん!?ていうか、コートどうするよ!?この半袖一枚で?大雪の東京を?
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氷点下の東京を、やむなく半袖のドレス1枚で帰宅する逆瀬川。
ひどい風邪を引き、しばらく出勤できなかったという。
*Dragon Nightが京急国際線ターミナルのメロディに選ばれていたことから、タイトルとディテールを考えていたのですが、急遽曲が変わったという情報を聞き、急いで出題しました。実は一度も生で聞いたことなかったので、聞いてみたかったです。
*アシスタントの御影ちゃんはこの子の設定です。ストーリーには一切無関係。https://www.cindythink.com/puzzle/4946