ある夜、王宮ではきらびやかな舞踏会が行われていた。
やがて王子様がホールに降り立つと、歓声があがった。
王子が探し求めているのは、妻となるべき人が手に入れたという高級真珠、ラテラルパールのネックレスを身に付けた女性だ。
たちまち数人の女性が、美しいラテラルパールのネックレスを揺らしながら駆け寄り、王子をダンスに誘う。
しかし王子が真っ先に踊りに誘ったのは、隅っこに立っていた、とても売り物にならないようなネックレスを身につけた女性だった。
なぜ?
転載元: 「異聞・シンデレラ・ストーリィ」 作者: 丼 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/5053
「お嬢さん、よろしければ一曲お相手をいただけますか?
ひと目見て思ったんです。今宵の舞踏会、お相手は貴女しかいないってね。「貴女のつけていらっしゃるその真珠のネックレス、ラテラルパールでしょう?
なんとも素晴らしい…他にはない独特な輝きだ。
まるで夜空にきらめく星のようです。「失礼、こう見えて私、真珠には詳しいんです。
普通真珠のネックレスっていうのは、大きさや色の似た珠を近くに並べて結ぶもんなんですがね。
貴女のネックレスの珠の並びは、大きさも色もてんでバラバラ。
どんな職人がしつらえたって、こうはいきません。「そして貴女はものを大切にされるお方のようだ。
ほら、糸のここ、結び直したような継ぎが見えている。
継ぎが見えてしまうということは、どうやらいくつか珠が足りていないとお見受けしますな。
そこで、私の手持ちのこいつらと合わせれば…あァ、思った通り、ピッタリだ。「あァ、これですか?
…実は先ほど、私の婚約者のシンデレラが何者かに襲われましてね。
えェ、幸い大した怪我じゃなかったんです。
彼女が言うには、暗闇で犯人と揉み合いになって気がついたらこの数粒の真珠、ラテラルパールを手に握って倒れていたそうなんです。
おそらく、とっさに犯人の首からちぎり取ったんでしょう。
床には何も落ちていませんでした。よくもまァ、ご丁寧にかき集めたもんです。この数粒以外は。
何度見ても貴女のネックレスに丁度いい具合だ。このまま差し上げてしまいたいぐらいです。「…あァ、お嬢さん。ご心配には及びません。
—— も う ど こ に も 逃 げ ら れ ま せ ん よ 。」
【補足】
「妻となるべき人が手に入れたという高級真珠、ラテラルパール/のネックレスを身に付けた女性だ。」