地球から初めて宇宙へ飛び立った女が、無事に帰還を果たした。
しかし、出発の時に女を見送った人々は誰一人として出迎えには現れなかった。
それどころか、中には「女は死んだも同然だ」と言う者さえいたと言う。
なぜ?
転載元: 「異説・アストロ・ノーテス」 作者: 丼 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/5052
翁曰く、
「天人さまがおっしゃるには、あちらはまさに極楽浄土じゃ。
そこには苦しみや悲しみなどはなく、老いや死すらもないという。
「確かにこの世は苦しみや悲しみに満ち溢れ、穢れておる。
だが、それゆえに互いに支え合い、励まし合うて喜ぶこともできる。
あの娘は野山を駆け回り、よう泣き、よう笑うておった。
それを全て失のうて、もの思うこともなくなってしもうたあの娘は。
果たして今、生きておるといえるのじゃろうか?
「少なくとも、わしにとってはあの娘はもう死んだも同然じゃ。
そうはいうても、今はただ。
今はただ、あの娘が幸せに暮らしておることを願うほかあるまい。」
竹取の翁の嘆きは、立ち上る煙とともに空に消えていった。