山のふもとにある桜の根元をざっく、ざっくと掘る老婆。なぜそんなことをしているのだろうか。
転載元: 「花咲婆」 作者: GoTo_Label (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/4152
「大変です! 遠足先の山で突然崖崩れが起きて……」
そんな電話に驚き、女が駆けつけた山は大きく姿を変えていた。
ものものしい状況の中、泣き叫びながら待つが、ついに息子は帰ってこなかった。捜索も打ち切られた。
事故から何年か過ぎたある春の日、現場を訪れた女は、崩れた崖の下で小さな桜の若木が生えているのを発見してハッとする。
思い出したのだ。
あの日の弁当にさくらんぼを入れていたことを。
「もしかして、あのさくらんぼが芽を出して育ったのではないか」
女はスコップを持ってくると、桜の根元を掘りだした。
それから年月が経った。
「そんなのが芽を出すわけはないでしょう。危ないからおやめなさい」
周囲の人はみなそう言う。
しかし、今は老婆になった女は、今日も桜の若木を探して山を歩いている。
【要約解説】
弁当にさくらんぼを持たせ、そのまま山で行方を絶った息子のなきがらがそこにあるのではと思ったから。