時は明治、欧米列強に飲み込まれまいと、富国強兵に邁進していた時代。
ある地方の徴兵検査(兵士として大丈夫か調べる身体検査)を行っていた軍医、石井良斉は、
検査を受けに来た青年たちを見て驚愕する。
彼らの身長は140cmほど(当時でも子供の身長)しかなく、
腹が膨れ上がり、手足はやせ細り、顔面蒼白だったのだ。
同じころ、その地方から、その病を何とかしてほしいという嘆願書が県に提出された。
そこには、こう記されていた。
「原因は皆目判らず。水だろうか、土だろうか、それとも身体に原因があるのだろうか。嗚呼悲しきかな、困苦見るを忍びず。」
軍部と県はこれを重く見て、この病――地方病解決のための組織を編成した。
医師、三神三朗と、Cindyの仲間たちである。
地方病から皆を救うのは、貴方たちだ。
転載元: 「【GM彩雲の】地方病【歴史を辿るTRPG】」 作者: 彩雲 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/3965山梨県は、耕地を占める水田の割合が全国で5番目に低い。(令和元年)
その理由としては、
等の理由で果樹栽培が盛んである事も大きいが、ほかにも理由がある。その1つが、
である。
皆さんの食べている果物も、もしかしたら死闘の果ての副産物なのかもしれない。
正式名称は日本住血吸虫症。
日本住血吸虫が寄生することによって引き起こされる寄生虫症である。
日本住血吸虫が肝門脈に寄生すると、
そこで有性生殖を行い産卵する。
産卵した虫卵は小腸の腸壁を分解し腸内へと落下、排泄されるが、
そうならずに肝臓へ流れ着いた虫卵が肝臓を分解し、ダメージを与える。
肝臓が傷つきすぎると、肝硬変になる。
排泄された虫卵は、水中で孵化し、ミラシジウム幼生になる。
ミラシジウム幼生は、特定の巻貝――ミヤイリガイの体表を破り体内に侵入、
そこでスポロシスト幼生に変態する。
スポロシスト幼生は体内から複数の娘スポロシスト幼生を生み、
娘スポロシスト幼生は体内から複数のセルカリア幼生を生む。
尾が二又のオタマジャクシのような形態のセルカリア幼生は、
ミヤイリガイの体表を破って水中へ進出。
その水に哺乳類が手足等を入れると、
体表を食い破って血管に侵入。
そのまま寄生部位(肝門脈)まで流れ着く。
体表を食い破られた時に皮膚に起こる炎症をセルカリア皮膚炎といい、
現地の人はそれを泥かぶれと呼んでいた。
地方病を撲滅するために動き出してから、
世界中の誰も知らなかった寄生虫を発見し、その寄生虫に日本住血吸虫と命名し、
(中国、フィリピンなどの東アジア、東南アジアに分布しているので、日本人以外も知りえたが、
最初に発見したのは日本人である。)
寄生虫の中間宿主が淡水産巻貝であるという事実を世界で初めて見出し、
(この発見を受け、ビルハルツ住血吸虫とマンソン住血吸虫の中間宿主が発見された。)
そして日本住血吸虫、ミヤイリガイを徹底的に排除し、
遂には日本住血吸虫を国内から駆逐するまでには、
実に115年もの年月を要した。
「タブ:地方病とは」にて地方病の解説を行ったが、
プレイヤー達はまずはその事実を知る必要がある。
最初に周辺住民への聞き込みを行えるが、
この時は、後から影響してくる情報も落とすようにしている。
また、聞き込みが不可能になる事は無いので常に情報は得られる。
最初にプレイヤーが行わなければならないのは、"解剖"という言葉を使用する事。
“解剖"という単語を使用することで、史実でも地方病究明の契機となった、
イベント"杉田なかの検体”
が発生する。
このイベントにより、肝臓で虫卵が発見される。
この虫卵が原因であるならば、寄生虫がどこかに存在するはずである。
その寄生虫を探すのが、次の行動である。
手掛かりとして、虫卵が肝臓、小腸、大腸からのみ発見されるという事実がある。
(実際はごくまれに脳などに虫卵が流れ着くことがあるが、
ミスリードにしかならないので今回はそういう例には出会わなかったことになっている。)
また、下剤を用いても虫卵しか出てこないというのもヒントになる。
これらから、肝臓と小腸に関係する場所に寄生虫がいるという事が推測できる。
そういう場所があるのか直接質問してもいいが、
質問しなくてもプレイヤーは知っているだろう。
それは、"門脈"である。
何故解剖のイベントで、唐突に門脈の描写が出てくるのか。
何故門脈の説明がなされるのか。
それは、門脈が肝臓と小腸を繋ぐ血管であるという事を知ってもらうためである。
一応であるが、漠然と血管内という答えであっても、
具体的にどこのものであるかというのを質問して誘導するつもりではあった。
寄生虫が発見されたので、次に突き止めるのは、
その生活環=どうやって感染するかである。
まず、感染原として、最も疑われるのは水である。
聞き込み調査でも、水との関連性をこれでもかと強調されるだろう。
実際に感染源は水なので、それ以外のものを調べたり何かしたりしても何も起こらない。
水が感染源であると確定させる情報ではないが、
虫卵を水につける実験を行うと孵化する。(この情報は調査で明かになる事は無かったが……)
この事実も水と寄生虫との関連性をより確実にするだろう。
水が感染源であるとすると、感染ルートは
飲んで感染する経口感染と、
触れると感染する経皮感染のほぼ2択である。
ここで行うのが比較実験である。
実際に経口感染と経皮感染を予防したりしなかったりして、
どちらが起こっているのか確かめるのである。
すると、経皮感染であることが判明する。
史実では医者が自分の体で実験を行ってたりもする。ヤバい。
また、中間宿主が存在するかどうか、その確認は実は簡単である。
虫卵と水だけで感染がおこるかどうかを確かめればいい。
虫卵か、虫卵から孵化した幼生で感染がおこるのであれば、
中間宿主での変態が必要ない=中間宿主が存在しないことになる。
実際に実験してみると、感染は起こらない。
なので、日本住血吸虫には中間宿主が存在するという事になる。
中間宿主が存在するので、それを探す必要があるが、
本気で再現すると水生生物を列挙してひたすら調べる作業になってしまうので、
水田にも川にもいる巻貝であるという程度の特定で発見されるようにしてある。
ここで発見されるのが、中間宿主であるミヤイリガイだ。
日本住血吸虫の生活環が分かったので、
仕上げにその生活環をぶった切る事にする。
体内の寄生虫に関しては、投薬によって対処することが可能であるが、
寄生虫の死骸や虫卵を除去できないので
これ以上の悪化を防ぐ程度の意味しかない。
なので、体外にいる間に処理をする必要がある。
だが、虫卵からミヤイリガイへの感染を止めるのはほぼ不可能だ。
史実でも改良型肥溜めで虫卵を発酵させて殺したり、
野糞を禁止したりしたが、人間以外からの排泄物から
虫卵が水中に進出してしまう。
なので、残すべきは2つ、
ミヤイリガイを根絶する事と、
ヒトへの感染を防ぐこと。
ミヤイリガイの根絶は、地道に殺貝するしかない。
史実でも、石灰や薬剤の散布、火炎放射を行っている。
そして、ヒトへの感染を防ぐには、水に触れないようにするしかない。
職業柄水に触れなければならない米農家はしょうがないにしても、
そうでない人、特に子供が水に触れることを避けなければならない。
このため、日本住血吸虫の仕組みをわかりやすく解説した多色刷りの絵本
『俺(わし)は地方病博士(ちほうびょうはかせ)だ』が制作され、
県内全域の小学校に配られ、感想文を書くことを義務付けられた。
さらに、子供たちが暑い時に川に入って涼まないように、
小学校へのプールの設置が急がれた。
そして、水に触れる機会を減らし、ミヤイリガイも減らす一石二鳥の手が、
水場を埋め立てる
である。
埋められたミヤイリガイは窒息死し、埋めた場所は水場じゃなくなるのでそこで感染することは無くなる。
史実でも、先祖代々受け継いできた水田だけど、先祖代々から苦しめられた地方病から逃れられるのであればと、
多くの人が水田を止めた。
この中で、正解条件にした2つが、
理由としては
絵本の配布は、これによって多くの人に地方病のメカニズムが知られることで、
他のあらゆる手段がスムーズに行われた点で重要であると考えられること。
水田の埋め立ては、ミヤイリガイ殺貝と感染機会減少の一石二鳥の手であると同時に、
県の今に至る農業形態を決定付けたこと。
が挙げられる。
提案された対策のうち、実際に行われたもの
提案された対策のうち、実際には行われなかったもの
実際に行われた対策だが、提案されなかったもの
意図して行ったわけではないが、対策になったもの(提案はされていない)
今回は、構想1日からの見切り発車問題に参加していただき、
誠にありがとうございます。
(もちろん、構想1日とはいえ、行けると思ったから出したわけですが……)
個人的にふりかえってみると、
亀夫君問題の形式ではなく扉形式にして、質問への回答の正確性を保証したほうが
円滑な進行につながったのではと考えていますが、
その点について意見をくださるとありがたいです。
その点以外についても意見をくださるとうれしいです。
それはそれとして、後半ログイン頻度が下がったのは明らかな反省点です。
精進します。
最後に、参加してくださった
Duffy氏
おっ氏
エルナト氏
アーク氏
本当にありがとうございました!