閲覧者数: ...

桜咲く

[亀夫君問題]

最近、彼氏の様子が変です。

誰かに頻繁に電話をしたり、すごい怯えていたり。

知恵を貸してもらえませんか?


出題者:
出題時間: 2017年10月31日 17:37
解決時間: 2017年10月31日 20:03
© 2017 白露もみじ 作者から明示的に許可をもらわない限り、あなたはこの問題を複製・転載・改変することはできません。
転載元: 「桜咲く」 作者: 白露もみじ (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/38
タグ:

FA条件:廃校になれば、次の建物が建つときに、地面が掘り返されるので、校庭に埋めた死体がばれるから

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「なあ、知っているか?桜の木の下には死体が埋まっているんだよ」

いつの事だったか、優介がそんなことを言っていた記憶がある。

私は何て返したんだっけ。きっと適当に笑って、当たり障りのないことを言ったんだろう。

何でこんなことを覚えているのだろうか……何かが、何かが私の中で引っかかっていたんだ。

彼の声?彼の目線?それとも彼の表情……? ―――きっと全部だ。

何か抱え込んでいたものを、ふと無意識に言葉にしてしまったような

寂しさと苦しさと、どうにもできないあきらめの気持ちが混ざったような……

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

水平高校が廃校になる。そのことを知ったとき、優介は恐怖と不安に駆られた。

廃校自体はどうでもよかった。そこまで好きな学校ではなかったから。

ただ一つだけ大きな問題があった。校庭にある桜の木の下に埋められた……

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今でも昨日のことのようにはっきりと覚えている。あの三年前の出来事。

高校まで優介は野球一筋だった。中学ではそれなりの成績を残していたし

高校も野球がそれなりに強いから選んだ。

ただ、高校野球部の監督が厳しかった。体罰も頻繁に行っていた。

延々と怒鳴られ、死ぬほど厳しい練習をやらされた。

監督はみんなから嫌われていた。俺も嫌いだった。野球部をやめてやろうと何度も思った。

それでもずっと続けてきた、3年の春。最後の大会に向けてレギュラー陣は猛練習をしていた。

じめじめとむし暑い夜だった。かなり遅くまで居残り練習をさせられていた優介たちは、監督と揉め事になった。

優介たちは殴られ、暴言を吐かれ、出場メンバーから取り消すと言われた。

我慢の限界だった。ずっと貯まっていた何かが、自分の中で爆発した。

気が付いたら、地面には頭から物凄い量の血を流して、倒れている監督がいた。

優介の手には金属バットが握られていた。みんな固まっていて、優介を見つめていた。

数秒逡巡した後、はじめて金属バットで監督を殴ったことに気が付いた。

きっと即死だったんだろう。監督はぴくりとも動かず、みるみるうちに冷たくなっていった。

その時自首するべきだったのかもしれない。ただ優介たちには冷静になれる余裕がなかった。

校庭にある桜の木の下にシャベルで穴を掘った。ただひたすら掘った。

みんなで死体をひきずり、穴に放り込んで埋めた。血の付いたバットと土も全部埋めた。

あの日、野球部の中で秘密ができた。どうしようもないほど重い秘密が。

突然監督が行方不明になり、学校は大騒ぎになった。

警察が来て聞き込みもした。優介たちは口裏を合わせて嘘をついた。

気が気じゃなかった。いつばれるかと頭がおかしくなりそうだった。

しかし、事件は解決しないまま、やがて学校は日常へと戻った。

優介は野球をやめた。もう出来る気がしなかった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

学校が廃校になれば、やがて取り壊されるだろう。そしてそのうち、新しい建物が建つ。

その時に、きっと桜の木の下も掘り起こされる。そしたら俺たちは……俺は……

野球部のメンバーと連絡を取り合ってからも、不安と恐怖は一切なくならない。

それどころか、日に日に圧がかかっていき、胸が押しつぶされそうになる。

眩暈がする。吐き気がする。耳鳴りが強くなる。ぐるぐるぐるぐる

誰か……誰か助けて……

「優介、大丈夫?ちょっと、今にも死にそうな顔しているよ」

桜か。そういえば最近まともに話していなかった。

中学の時から一緒で、高校も一緒。大学1年の時付き合い始めた。

彼女に秘密がばれたらおしまいだ。何もなくなってしまう……

「ねえ、優介、いつの日か、桜の木の下には死体が埋まっている。って言ったよね?」

え……何を……

「本当の事、私に教えて。あなたの秘密を、苦しみを、罪を、全て共有したいの。わがままだって分かっているけど、どうしても知りたい。」

俺は久しぶりに彼女の目を正面からちゃんと見た。綺麗に澄んだその瞳を。

全て気が付いていたのか……俺はだんだん落ち着いてきた。眩暈も吐き気も、もう大丈夫だ……

「実は―――

彼らがどうなったかは分からない。でもきっと、彼は、彼女という希望がある限り、強く生きていけるだろう。


出題者:
参加するには または してください
パトロン:
アシカ人参
と 匿名パトロン 3 名
Donate using Liberapay
Avatars by Multiavatar.com
Cindy