カメオは、ウミガメのスープが好きな事を公言してはばからなかったので、親しい人はみんな、カメがウミガメのスープ愛好者である事を知っていた。
しかしカメオは、死を目前にしたその時になって、ネタのメモや関連書籍だけでなく、PCやスマホをも処分してまで、ウミガメのスープ愛好者である事を隠そうとした。
一体なぜ?
転載元: 「ナンセンスダンス」 作者: 霜ばしら (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/3330
【 答え 】
大量殺人事件を起こして死ぬつもりのカメオは、事件に影響を与えたものとして、ウミガメのスープが悪しく報道をされる事を恐れたから。
10年前、カメオの恋人が事故で亡くなった。
当時のカメオは憔悴し、何も手につかないほどだった。
何年もの時を経て、やっと悲しみとも折り合いがついてきた頃、
カメオは、恋人の死がただの事故ではなかったのだと知る。
恋人を殺したのが権威のある組織だった為、事故死として隠蔽されたのだ。
犯人達は罪を償う事もなく、のうのうと生きている。
そんな事が許されていいはずがない。
カメオの悲しみは憎しみに塗り替えられていく。
厄介な事に、真っ当に糾弾しても敵う相手ではない。
証拠を突きつけたとしても、もみ消されてしまうだろう。
それならば、せめて、せめてこの恨みだけでも思い知らせてやらなくては。
この時から、カメオの人生は復讐の為に捧げられた。
その組織の本部を爆破する計画を立てるカメオ。
全てが終わったら、恋人の後を追って死ぬ覚悟である。
だが死ぬ前に、もう一つだけしておかなければならない事がある。
カメオの復讐は世間を騒がせるだろう。
しかし、カメオの動機もまた、もみ消されるに決まっている。
マスコミは、動機不明の大量殺人事件の犯人として、カメオの人となりを
暴こうとするに違いない。
残酷な嗜好を持っていると知ったら、喜んで飛びつくだろう。
ウミガメのスープは残酷な表現が含まれる物語だ。
他にもブラックな結末のものは存在する。
そんな残酷な問題ばかりとりあげて、さも事件に影響を
与えたかのように報道されてしまうかもしれない。
親しい人達は、カメオが異常者ではないと信じてくれるだろうが、
何も知らない人は、それらに意味を見出したくなるものだ。
恋人を亡くしたカメオの心の隙間を埋めたもの。
それがウミガメのスープだった。
復讐を誓ってからは遠ざかってしまったが、
今でも、ウミガメのスープが好きな事に変わりはない。
自分が異常な犯罪者扱いされるのは仕方ないとしても、
ウミガメのスープ愛好者が、犯罪者予備軍の様に言われるのは嫌だった。
決行の準備を終えたカメオは、ウミガメのスープを愛した痕跡をひとつひとつ消していった。