住宅街になった故郷の姿を見ても昔と変わらないなとカメオが思ったのは、
白い蝶を一匹も見かけなくなったからだというのだが、一体どういうことだろうか。
(エルナトさんのリサイクルです。)
転載元: 「 【蝶ますか?リサイクル】鉄屑のオルフェンズ」 作者: ZENO (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/3115
【一行解説】
故郷である廃棄物処理場が、住宅街になった今でも汚染されていることを知ったから。
【ストーリー】
(過去)
カメオは孤児だった。物心付いた頃には、鉄屑と共に生活していた。
カメオの故郷は、A社の運営する廃棄物処理場に隣接した地域。
その一角にある、建物とは到底呼べないバラックにカメオは住んでいた。
廃棄物処理場といえば聞こえは良いが、
要はA社が垂れ流す汚染物質やら産業廃棄物やらの掃き溜まりである。
良識ある人間なら誰も近寄りはしない、
文字どおり世の中の「ゴミ」が集まる場所だ。物も、人も。
うず高く積まれた産業廃棄物の中から価値のある鉄屑を掘り出し、
二束三文で業者に売ることで辛うじてその日の糧を得る。
そんな生活がカメオの青春そのものだった。
そんなカメオがある金持ちの目に留まり、
養子として都会暮らしをすることになるのだが、その経緯は割愛する。
それをここで語るには、あまりに不適切と言わざるを得ない。
(現代)
さて、時は流れて現代。
カメオは養父の元で成長し、ひとかどの成功を収めることができた。
その間、住民の権利意識や環境問題に対する意識も高まり、
廃棄物処理場の土壌汚染が発覚するなど、A社に対する批判の声が高まった。
その声を受けたA社は、廃棄物処理場をクリーンな住宅街として造成するということだ。
そのニュースを聞いたカメオは、懐かしさやら嫌悪感やらがないまぜとなった
名状し難い感情に襲われた。
無為に過ごした青春時代。原因不明の病に倒れた幼馴染たち。昔日への決別。
そんな気持ちに決着を付けるため、一度、その場所を訪れる必要があるだろう。
(訪問)
カメオの住む都会からその住宅街に向かう途中、数時間もの田舎道を走ることになる。
その間、街道の菜の花に舞う何匹もの白い蝶がカメオの目に留まった。
都会暮らしが染みついたカメオには、そんな風景もノスタルジックに映ったものだ。
だが、カメオが住宅街に近付くにつれ蝶の姿はまばらとなり、
最後には一匹も見当たらなくなった。
そして、ついにカメオは故郷を目の当たりにした。
そこは確かに小奇麗に整地された住宅街だ。
だが、判で押したような建売住宅が並ぶその街並みは
猥雑な化粧に糊塗された醜女をカメオに連想させた。
どこにも草花がない。昆虫もいない。そんな無機質な街。
そう、この街の土壌は徹底的に汚染されている。蝶一匹住むことができないくらいに。
そんな情景を目の当たりにして、カメオは
「結局ここも、A社のやり方も、何も昔と変わっちゃいないな。」と悟ったのである。