高校の昇降口、何も入っていない下駄箱を見て、カメコに片思いしていたウミオは溜め息を吐いた。
ウミオが思い浮かべているのは何?
転載元: 「甘くて苦い」 作者: つのめ (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/2922
【青い春】
去年の3月、僕らの卒業を機に廃校となった母校に足を運んだ僕は誰もいない教室の机に座りカメコの事を考えていた。
故郷を出て、都会の大学へ進学したカメコからは頻繁に連絡が来る。
やれ今日はどこそこへ遊びに行った。
やれ都会は知らないことだらけで不安だけれど、楽しくやっている。などなど
事細かな連絡は、僕らの間に壁を感じさせないようでとても嬉しい。
それでも、最近の連絡に添付された写真にうつるカメコの右手の薬指に光るリングが、どうしようもなく僕の心を締め付けた。
(カメコにとって僕はただの幼馴染だったのかな。
知らなかったと思うけど、カメコのこと好きだったんだぜ?
気持ちを伝えておけばよかったのかな。
それとも…。)
今更どうこう考えたって何も変わらないのに、煮え切らない嫌な自分が顔を出すのは何故だろう。
なんとも言えない淀みが心に芽生えたのを感じた僕は、(今日はもう帰ろう。)と、教室で、廊下で、階段で、カメコと笑いあった思い出をかき集めながら木張りの廊下を昇降口へと進む。
(2人で登下校したあの楽しい日々は、もう戻ってこないんだな…。)
昇降口に残された空っぽの靴箱は、なんだか僕のようだった。