ウミオが「祖父の腕時計を使い続けるつもりだ。」と言うので、カメコはウミオと会う回数を減らすために全力を尽くした。
なぜ?
転載元: 「右回りの宝物」 作者: つのめ (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/2863
【形見を大切にしているウミオの為に、時計の寿命が少しでも長くなるように、次の修理までの期間がより長く開くように、時計職人のカメコは全力を尽くすことにした。】
ある日、うちの工房に腕時計の修理の依頼が舞い込んできた。
とても古いその時計は綺麗に使われているものの、所々にガタが来ている。
今回修理したとしても、次はここが、今度はここが。とドンドンと修理費用がかさむだろう。
誰もが知っているような高級時計を幾つか挙げ連ね、この時計を使い続けて行くのなら、最終的にそれらを購入するのと同じくらいの費用がかかってしまうが構わないか?と尋ねた私に
彼は、良いことを聞いた!と言わんばかりに顔を綻ばせ、この時計は祖父の形見であり、自分にとっては最高の時計なのだと、修理ができず二度と時を刻まないのであれば諦めようと思ったが、使い続けることが出来ると言うのであれば、この時計を使い続けていきたいのだと。そう言った。
そう仰るのであれば。と修理を引き受けた私は、今はまだ動かない彼のおじいさんの時計に目をやる。
修理の精度が高ければ高い程、物持ちはよくなり顧客の来店頻度は落ちる。
それでも、大切な物が長く使えると喜んでもらえるのならそちらの方が良い。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
期日の夕方。
私はいい仕事が出来たと充足感を噛み締めながら、チクタクと音を奏でる時計を愛おしそうに受け取り去っていく、彼の背中を見送った。