万能ねぎ

男が深夜に自室の冷蔵庫を開けると、そこには傷んだねぎが入っていた。

男はそのねぎを取り出して生ゴミ入れに捨てると、
「これもきっと傷んでしまうだろうな」
と考えながら、まだ新鮮なねぎを冷蔵庫に入れた。

一体なぜこのようなことをしているのだろう？

※魔除けのアイテム的な意味合いはないとしてよい。

男の住むアパートは繁華街の近くにある。
たまに帰宅が夜遅くなると、最寄り駅からアパートまでの道中で多くの客引きに遭遇する。
居酒屋やキャバクラなど勧誘の種類は多様だが、共通しているのは「しつこく付きまとってくること」だ。男はうんざりしていた。

客引きに声をかけられない方法を考えた男は、駅前のスーパーでねぎを買い、レジ袋を手に繁華街を横切ることにした。
生鮮食品の入ったレジ袋を手に歩いていれば、男がまっすぐ家に帰るつもりであることは一目瞭然だ。

この作戦により客引きは寄ってこなくなったが、家で料理をしないので男がねぎを使う機会はない。