男は毎晩ある願いをした。そして朝が来るたびに、その願いが通じなかったことを男は知った。男の願いとはいったい何だろうか。
転載元: 「願いよ届け」 作者: そーこん (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/2449
「少しでも早い時間に眠れますように…」
男は毎晩願っていた。
男は睡眠障害、いわゆる不眠症の一種である睡眠相後退症候群という障害を患っていた。
この障害を患っている患者はとても遅い時間に眠りにつく傾向があり、朝起きることが困難である。
男は毎日朝の7時頃まで一切眠気が来ないが、その後は普通の睡眠を取ることができ、昼過ぎに自然に起きていた。
そのため、周りの人からはただの睡眠リズムのずれだと言われ、上司には医者からの診断書を見せても障害であることを理解してもらえず、会社はクビになった。
男は医者から処方された睡眠薬を毎日飲んでいたが全く効かず、睡眠障害は治らなかった。
男は様々なことを試した。
昼間の運動、カフェインの不摂取、アルコールの不摂取、そして寝る数時間前からパソコンもスマホも触らないようにした。
それでも治らなかった。
男は辛かった。だから毎晩願っていた。
「ただ、ただ普通の人のような時間に寝て起きたいだけなんだ…」
神にも祈るように男は願い続けた。
「少しでも早い時間に眠れますように…」
しかし無情にも、その日も男に眠気が来る前には、太陽が出て、夜空は消え、朝日が街を明るく照らしていた。
男の部屋にも、カーテンの隙間から朝日が差し込んできた。