カメオは女に名前を覚えてもらえていなかった。
カメオはそのことについて落ちこんでいたのだが、女がカメオの名前を呼んだとき、これでお別れだと思った。
いったい、どういうことだろうか。
転載元: 「詐欺なんて目論むから」 作者: 葛原 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/2310
「バリオ、しっかりご飯を食べるのよ」
認知症のウミエがカメオを呼ぶ。
バリオというのは、彼女の息子の名前であった。
認知症であるウミエは、ヘルパーであるカメオのことを、バリオだと思っている。
カメオは親の愛情を受け取ってこなかったので、一心に注がれるウミエの愛情には、心が安らぐのを感じざるを得なかった。
「バリオ、風邪を引いたらだめよ」
こんなにいい人が、認知症になるなんて……
5年後。
奇跡的に、ウミエの症状はよくなった。いまでは介護者を必要としないほどだ。
「カメオさん」
他人行儀にウミエがいう。「いままで、ありがとう」
「――また、いつでも遊びにきてちょうだいね」