降り注ぐほどの満天の星の下。
真冬の月に照らされて、ノボルとイズミは夜空を見上げていた。
「ねぇノボル、カシオペヤ座ってどれだっけ?」
「うん?北極星の上の方。星が5個、Mの字の形に並んでるやつだよ」
「あ~、あれかな?えーと、そのすぐ隣って言うと……」
「隣?何か探してるの?」
「うん、よだかの星。あれかな?いや、あっちかも」
「よだかの星?」
「うん。『夜』の『鷹』で『夜鷹』。星になる事を願ったよだかがボロボロになりながら飛び続けて最後に星になったっていうお話があるんだ。とても綺麗で、とても悲しいお話……」
ノボルの方に背を向けたまま語るイズミの表情は窺い知れないが、その声は何かを懐かしむように優しく、そしてどこか悲しげに感じられた。
何となくイズミの様子が気になったノボルは冷たい夜風を気にしつつも彼女の顔を見ようとして背後から声を掛けたが、振り向いたイズミは明らかに怒っていた。
どうしてだろうか?
転載元: 「不倶戴天体観測」 作者: TATATO (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/1373
ノボルが露天風呂の男湯と女湯を隔てる垣根を登って女湯を覗いていることに気付いたから。