「ここまでいらっしゃるのは、大変だったでしょう。お疲れ様です。おっしゃっていただければ駅までお迎えに上がりましたのに」
出張先に着いた女の姿を見て、相手はそう声をかけた。
「いえいえ、大した距離ではありませんし、歩くのも好きですから、お構いなく」
実際、最寄駅はそこからすぐ見えるぐらいの場所で、歩いてもせいぜい7−8分だったので、女は正直にそう答えた。
打ち合わせが終わった後、
「わざわざお越しいただきありがとうございます。それではこちらで失礼いたします」
と言われ、女は取引先に見送られた。
だが、駅までの道を歩き始めたとたん、
「え、ここ歩かなきゃいけないのか…」
と女は辟易した。
出張先で荷物が増えたわけではなく、天候が変わったとか、暗くなったということはない。
女の健康状態に変化はなく、座って商談していただけなので、疲れたということもない。
なぜ女は帰りは歩きたくないと思ったのだろう?
*2月2日(日)午後2時ごろに〆ます。
転載元: 「I got one more run and it's gonna be a sight to see」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/10179