ここはとある地中海沿岸の町。
毎週土曜日になると蚤の市”Mercato delle pulci”が立つことで知られている。
馴染みのジョバンニのストールを訪ねたのは、相変わらずの美しさを保っているファッショニスタ、マダム・カムパネルラ。
なのに、今日はどこか不機嫌そうだ。
「Ciao!カムパネルラ!!…どうしたんだ、ごきげん斜めじゃないか。」
「そうなの、聞いてよジョバンニ。ほら私、去年バカンスに行ったときにね…」
と勢い良く愚痴大会が始まった。
要約すると、去年旅先で買ったお土産が偽物だった、ということらしい。
「偽物って今してるそれがか?きれいだけどな。」
「そう!きれいだからこそよっ!」
「1年も経ってから気付いたのか…?」
「ま、まあね。だって季節じゃないし、しまっといたのよ!」
マダム・カムパネルラはなんで怒ってるんだろう。
*百人一首 その九十一【きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ】からのinspireです。
転載元: 「remember how everything was so beautiful?」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/10001
*旅先で高級毛織物と騙されて買ったものが化繊だったため、虫に食われなかった。(他に一緒にしまってあったカシミアだのパシュミナだのは虫にやられた。)
「偽物って…これ…パシュミナのショール…いや、そうじゃないのか?」
「そう。実はついうっかりして、ハーブのモスボール(防虫剤)の匂いが飛んでしまっていたのよ。
そうしたら、他のパシュミナやカシミアやビクーニャは軒並み虫にやられたのに、これだけ無事だったの。ほんとに悔しくて。」
「ってことはこれはアクリルかなんかか…いや、最近のはほんとによくできてるな。」
「私ともあろうものが騙されるなんて、もう、情けないわ」
「いや、でも色は素晴らしく美しいし、カムパネルラが纏うと本物みたいに輝いて見えるよ。Che bella!!」
「そ、そうね、もちろん!!」