ウミガメシティの裏通り、そのまた裏通りの地下にひっそりと入口を構える『CINDY』は、知る人ぞ知る隠れ家的な店である。
地味な入口に反して、豪華絢爛な店内にはいくつものショーウィンドウが立ち並び、カウンターでは大金が飛び交っている。
『CINDY』を訪れたカメオは、まるで異世界に迷い込んだかのような居心地の悪さを感じつつ、店内を見て回る。
そうしていると、一人の少年がカメオの目に留まった。
少年はショーウィンドウにめいっぱい顔を近づけ、ガラス越しに小さなくまのぬいぐるみを眺めている。
店の派手やかさとは対照的に少年の身なりは貧しく、プレゼントをもらったことなどないのかもしれない。
少年の悲しげな姿を見て、カメオは今すぐにでも買ってあげたい気持ちに駆られたが、彼は別に裕福なわけではない。
ショーウィンドウに貼られた値札をちらと見たが、とてもカメオの手が出る値段ではなかった。
カメオはふと、このショーウィンドウが人目につきにくい場所にあることに気がついた。
カメオ(……大丈夫だ、きっとバレやしない。)
カメオは自身にそう言い聞かせると、店内に防犯カメラがないことを確認し、店の人間にバレないようにショーウィンドウの鍵を盗み出した。
そして、慎重に人目を盗みながらショーウィンドウの扉を開け、くまのぬいぐるみを手にすると、それを少年のポケットに滑り込ませた。
カメオ「絶対にポケットから出しちゃだめだよ。」
早口で少年にそう告げながら、ショーウィンドウの扉を素早く閉め、何食わぬ顔で別のショーウィンドウへと目を向ける。
少年「うん、ありがとう!」
少年の小さな返事が聞こえたのを確認すると、カメオは鍵を元の場所に戻し、店を後にした。
それからしばらくして、捜査を行っていた警察は、ポケットにぬいぐるみを入れたままの少年を発見した。
ぬいぐるみは犯罪の証拠品として押収され、少年は訳もわからずぬいぐるみと引き離されて泣くばかりであった。
後にカメオはそのことを知ると、大喜びしたという。
一体なぜだろうか?
転載元: 「Justice or Evil?」 作者: ぺてー (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/9981
A.少年を犠牲にすることなく、違法な臓器移植を行う病院を突き止めることができたから。
ウミガメシティの裏通り、そのまた裏通りの地下にひっそりと入口を構える『CINDY』は、犯罪者たちの間でひそかに知られている、子供の人身売買を行う店である。
ショーウィンドウの中には多くの子供たちが閉じ込められており、店は”商品”を選ぶ客たちで盛況している。
『CINDY』を訪れたカメオは、非日常も甚だしいこの卑劣な空間に、まるで異世界に迷い込んだかのような居心地の悪さを感じていた。
探偵であるカメオが『CINDY』にやってきた目的は、臓器移植を行っている病院を特定することである。
この店で購入された子供たちは、どこかの病院に連れて行かれ、臓器を取り出されているだろう。
こんな真っ黒な臓器移植を行う病院は限られているはずであり、一人でも後を追うことができれば、これまでの違法手術を一気に暴くことができる可能性が高い。
カメオは子供たちの行方を追うために、GPSと録音機能付きの盗聴器を準備した。
小さなくまのぬいぐるみに仕込んでいるのは、子供の持ち物だと誤認させるための申し訳程度の工夫である。
カメオは額に汗を浮かべながら、人目を盗んでぬいぐるみを仕掛けられそうな子供を探し回っていた。
そうしていると、ショーウィンドウの中で壁に張りつくようにして、カメオをまじまじと見つめる一人の少年が目に留まった。
どうしてこちらを見ているのかとカメオは思ったが、その理由はすぐにわかった。
カメオのポケットから、例のぬいぐるみがひょっこりと顔を出していたのである。
カメオ(なるほど、これを見ていたのか。)
店の派手やかさとは対照的に少年の身なりは貧しく、プレゼントをもらったことなどないのかもしれない。
カメオは今すぐにでも彼を買ってここから解放してあげたかったが、ショーウィンドウに貼られた値札には『A型・5歳:1800万』の文字。
しょっぱい探偵業で食いつないでいるカメオには、とても手が出る値段ではなかった。
ふと、カメオはあることに気がついた。
この少年のショーウィンドウは、人目につきにくい場所に設置されていた。
ここであれば、彼にぬいぐるみを渡せるかもしれない。
カメオ(……大丈夫だ、きっとバレやしない。)
カメオは自身にそう言い聞かせると、まずは店内の防犯カメラを確認した。
ここは人身売買の犯行現場であり、防犯カメラなどを設置しようものなら、お客様の犯罪の証拠を握ることになる。
そのため、店内に防犯カメラは一台も設置されていなかった。
カメオ(これはいけるぞ…)
カメオは店の人間にバレないように、ショーウィンドウの鍵を盗み出した。
そして、慎重に人目を盗みながらショーウィンドウの扉を開け、自身のポケットからくまのぬいぐるみを手にすると、それを少年のポケットに滑り込ませた。
カメオ「絶対にポケットから出しちゃだめだよ。」
早口で少年にそう言い残しながら、ショーウィンドウの扉を素早く閉め、何食わぬ顔で別のショーウィンドウへと目を向ける。
少年「うん、ありがとう!」
カメオ(よし、ちゃんと聞こえるな…)
盗聴器の受信機から少年の小さな返事が聞こえたのを確認すると、カメオは鍵を元の場所に戻し、店を後にした。
店を出てからというもの、カメオはひどく後悔していた。
自分の独断で、少年はおろか彼の家族までもを危険な賭けに巻き込んでしまった。
別に『CINDY』だけでも摘発できれば、それで十分だったのではないか。
そんな考えばかりが次々と脳裏をよぎっていった。
もし奴らが、少年を仕入れたときに持ち物を確認していたとしたら、彼が今ぬいぐるみを持っているのはおかしい。
ぬいぐるみが見つかれば、それが彼のものではなく誰かが持たせたものであるとバレてしまい、中身を調べられてしまうだろう。
5歳の子供がGPSと盗聴器をぬいぐるみに仕込むわけがないのだから、きっと彼の家族がこっそり持たせたのだと疑われ、奴らに捕まってしまう。
そうなれば、彼らが人身売買の証拠を握ろうとしたことになってしまう。
その後どうなってしまうかは、想像したくもなかった。
カメオ(どうか見つかりませんように……)
カメオはそう祈るばかりであった。
それからしばらくして、カメオと連携して捜査を行っていた警察は、ウミガメ病院で関係者らしき人物に手を引かれ歩く少年を発見した。
こうして、少年は無事警察に保護されたのであった。
少年には少し気の毒だが、ぬいぐるみは人身売買の証拠品として押収され、少年を連れていたウミガメ病院の関係者たちは、盗聴された会話をきっかけに逮捕された。
もう少しすれば、ウミガメ病院で本格的な捜査が始まることだろう。
そして、カメオの元にも警察から連絡が入る。
カメオ「っしゃあああ!」
カメオは拳を天に突き上げた。