アレンとクレアら文芸サークルの面々は、四月の新入生歓迎会について話し合っていた。途中、他の面々は用事があるといって抜け、喫茶店にはアレンとクレアだけに。
急に緊張した二人は、気まずさを取り繕おうと必死に話題を探した結果、自然とサークル内で付き合っている先輩の話となった。そして、アレンが爆弾を放り込み、クレアが火をつけた結果、事態は予想外の方向へ向かう。
「サークル内で付き合うとか考えられないよなー」
「え、私は別にアリだと思うけど」
「いや恥ずいじゃん、なに、誰か気になる人とかいんの」
「……あーっと……」
「……うそ、まじで……?
いやちょっと、どうしよう、すげーショックなんだけど。え、まさか俺って……ないない、ありえない。そういやよくアシカ先輩に絡まれてて、マジかよ。ああいうタイプがいいの?いや悪い先輩じゃないけど、やばい、泣きそう。えいやまだいるとかいったわけでもないし、でもいるよなーつかすでに付き合ってたり。あーそのパターンですか死にてーはぁぁそうだよなーこんな可愛い子周りがほっとくわけないもんなー」
ショックのあまり動揺して自分の世界に篭ってしまったアレン。照れ隠しに外をみていたクレアだったが、アレンの心の声が全て外にだだ漏れなので、衝撃の告白に体が硬直してしまった。
フリーズしたまま動かないクレアをみて、アレンはふと我に返った。なにやら様子がおかしい。俺が何かやらかしたのだろうか、全く心当たりがない……そんなときは……
「緊急事態発生!彼女の様子がおかしいのだが、原因が分からない!脳内の俺たち、即刻力を合わせて事態を究明せよ!」
友人の様子がどんなふうにおかしいのですか?
気がついたら窓の外をみてフリーズしている……
窓の外に何かありますか?
いや、特に人目をひくものはないけどな……
今日って何年の何月何日でしたっけ?
それがこの事態の突破口になるのでしょうか、師匠。
etc...
「いやいや、脳内会議って頭の中だけでやるものでしょ?さっきから心の声がだだ漏れなんですけど。なんか一人何役もやっているし、自分に敬語で話しかけて答えちゃってるし、もしかして本物の多重人格だったり……結構カッコイイと思ってたのに……ってショックってどういうこと?え、うそ。そういうこと!?どうしよう、情報量多すぎてやばい。
エマージェンシー!脳内会議を開催します!」
数分後、自問自答で失態に気づいたアレンは、先刻の自分のような彼女を目にして、ひどく赤面した。このことをきっかけに打ち解けた二人には、何やかんや春が来たらしい。