あの夜、一晩だけ一緒に過ごしたあの人にもう一度会いたい。
私はいつだってそう願っているの。
でも、それが叶ったことはなくて…どうしてなのかしら。
助けてくださらないこと?
*この問題は亀夫君です。主人公の女に質問をして、なぜ女が望みが叶わないのかを解き明かしてください。
*非現実要素があります。
*百人一首 その八十八【なにはえの あしのかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや こひわたるべき]からのinspireです。
転載元: 「como si fuera la última noche, una más」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/9713
*女は、朝になると「その時点で世界一美しい」顔になるという魔法をかけられている。
美の基準というものは、人の好みなので、移ろいやすい。
だから、次の日には、全く違う顔になってしまっている。
そのため、一度会った男にも気付いてもらえない。
*そのことを女に指摘してあげることがFA。
もちろんそれ以上の助言をしてもらってもかまわない。
*なお、女は、その時の顔を「自分の顔」だと認識している。
鏡に映った自分の顔には疑問を持たない。
*顔は毎日変わるが、そのいずれも甲乙付け難い絶世の美女であある。
ただし、人には好みがある。
その夜踊ってくれた相手は、たまたまその夜の彼女の顔が好みだっただけかもしれない。
*女はシレーナ・チェネレントラ。39歳。
ある国の王子と結婚し、宮殿に住んでいる。
*夫は公務や趣味、交際、その他もろもろで忙しく、シレーナのことを顧みなかった。
そこで、シレーナは、手袋を落として、毎晩違う男性と踊るようになった。
*夫に愛してもらえないことで悲しんだシレーナは、せめて自分が世界一美しい女性でありたかった。
そこで、(かつて自分に足を生やしてくれた)魔女に頼んで魔法の鏡を入手した。
その鏡に顔を映せば、世界一の美女になるのだという。
ちなみに、その鏡の前の持ち主は、親友のネーヴェ・ビアンカである。
*この国の風習で、結婚した高貴な女性はあまり公に顔を出さない。
夫と、ごく少数の側仕えだけである。
外に出る時はヴェールをかぶっている。
だから夜遊びをするのには好都合、ということでもある。
*この時代には写真はまだない。
ある時夫の部屋に知らない美女の肖像画(かつての自分の姿)が並んでいるのを見て、腹を立てて全部焼き捨てたことがある。
しゃくに触って、その後、シレーナは自分の肖像画を描かせることもなかった。
*一晩過ごした男たちとは二度と会う(親しく付き合う)ことはできない。
会っても、みんな他人行儀だ。
シレーナは気付く。
自分がどんな姿になろうとも、変わらず思ってくれていたのは、夫だけだということに。
何もかも、私が、悪かったのだ。
若い頃は、自分勝手だった。
政務に会議、会食に狩り、そして綺麗な女性たち。
身分の高い者の暮らしというのはそういうものだと、小さい頃から教え込まれてきた。
だから、シレーナが毎晩舞踏会に出かけても、咎める気はなかった。
むしろ、私は私のやりたいことができて、好都合だとさえ思っていた。
…しかし、年を重ねてようやくわかった。
本当に一緒にいたいのは、シレーナだということに。
でも手遅れだった。
シレーナは、夜遊びにふけっていただけではない。
魔女に頼んで、永遠に世界一の美女であることができる、魔法の鏡を手に入れたのだ。
…毎日基準が変わる、「世界一の」美女に。
無邪気な天使のような美女。
妖艶で蠱惑的な美女。
穏やかで母性あふれる美女。
氷のように理知的で端正な美女。
溌剌とした活気に満ち溢れた美女。
エキゾチックで陰のある美女。
私は毎朝シレーナと朝食の席に就く。
朝食の席に現れる彼女に、前日の面影は全くない。
でも、話していればわかる。
品の良さも、知性も、教養も、透き通った声も、優雅な身のこなしも、才気煥発の受け答えも、何気ない仕草も、引き込まれるような微笑みも、全てが紛れもないシレーナだ。
油絵の肖像画は全部焼かれてしまったけれど、そっと机にしまっておいた小さな細密画。
そこに描かれている、出会った時のシレーナと何一つ変わってはいないのだ。
今更何を後悔しても仕方がないのだけれど。
「…あなた」
振り向くと、そこには、シレーナが涙を浮かべて立っていた。
そのシレーナの顔は、昨日と同じものだった。
シレーナ:人魚
チェネレントラ:シンデレラ
ネーヴェ・ビアンカ:白い雪。多分トレーニングに入れ込みすぎて、鏡は要らなくなった。
*夫フランツ・ヨーゼフに愛してもらえないと感じたカイザリン・エリザベートは、自分が美しくあり続けることに執着することとなりました。
容貌が衰えてからは、黒いヴェールと黒い扇子で顔を隠して過ごし、決して肖像画を描くことは認めませんでした。
フランツ・ヨーゼフ:「私がどんなに彼女を愛していたか誰も知らないだろう」(エリザベートの訃報を受けて)
*某コピペネタ:「「痩せたのに気づいてくれない」とか「髪を切っても気づいてくれない」って彼氏に怒ってる女の子っているけど、君が中年になって太っても、年老いて痩せこけても、病気で寝たきりになっても、それでも変わらず君のことを愛し続けてくれる男っていうのは、案外そういう人かもしれない」