「願はくは花の下にて春死なむ その如月の望月のころ」
西行か。
その文章を見た僕は家を出た。
なぜだろう?
*Q13 セルフリサイクルです。
転載元: 「【願いますか?リサイクル】and we call it Bella Notte」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/9389
*和歌をよく知らない人が、遺書(西に行って死ぬ)だと思ったから。
同棲し始めたばかりの彼女の様子がおかしい。
帰りが遅いし、帰ってきてもぼんやりしていて、すぐに部屋に帰って寝てしまう。
ある日彼女のパソコンを見てみたら、
「願はくは花の下にて春死なむ その如月の望月のころ」西行
なんて書き置きがあった。
ごめん。国語、特に古文は苦手中の苦手なんだ。
彼女は国文科だから、わざとこういう書き方したのかな。
死ぬって何それ?遺書なの?
よくわかんないけど、望月って満月だよね。
そういえば、今日は満月だし。
西行き…って西方面に行って死のうと思ってるの?
花の下…ってちょうど桜も咲き始めた頃だ。
西の方には公園がある。桜が綺麗だが、穴場であまり知られておらず、人が少ない。
自殺にはうってつけだ。
まさか。
僕は急いだ。
そこにいたのは、思い詰めた様子の彼女…ではなく、一人ベンチでまったり缶ビールを空けている彼女。
「え、なんでここがわかったの?」
「早まらないで!僕に悪いところがあったら直すから!」
「は?」
「死なないで!」
「死ぬって…最近、ここで会社帰りにのんびりビール飲むのが楽しみだったんだよね。ちょうど満月の頃が満開だなあ、って楽しみにしてて、西行の歌デスクトップに載っけて気分上げてたの。」
「西行って?」
「西行法師知らないの?」
「何それ?」
「…まあいいや。国語苦手だもんね。」
「死ぬつもりないんだ?最近帰ってきてから様子がおかしかったから…」
「…飲んでるからバレたくなくてww桜見てるとなんとなく飲みたくなっちゃうんだけど、あんまり強くないから、ぼんやりしちゃうんだよね。すぐ眠くなっちゃうしww」
「…誘ってくれれば良かったのに。」
「桜とか興味なさそうじゃん。寒いの苦手だっていつも言ってるし。まだ結構寒いよ」
「そうだけど…」
そう言って僕は、彼女の横に座った。
確かに空気は少し冷たいけれど、桜も満月も美しい。
もちろん彼女も。
「月が綺麗だよね」
「え、桜が綺麗で見にきたんじゃないの?」
「…(わかんなかったか)ごめん、私が悪かったよ。」
「えっ?」