カメオは他人の真似をするのが好きではない。
特に、自分が他人の後に同じ言葉を繰り返して言うことに、なぜか強烈な嫌悪感がある。
英語の授業中はしばしば地獄と化した。
「Repeat after me. ・・・」
英語が嫌いなわけではないが、これだけは耐え難く、ほとんど口パクで誤魔化していた。
そんなカメオが成人し、ある店に就職した。
仕事はとても楽しい。
だが、真似ができないのが障害となった。
店では「来店したお客様にはちゃんと挨拶を」と指導されている。
それがこの店の売りなのだ、と。
「いらっしゃいませ!」「いらっしゃいませ!」「いらっしゃいませ!」・・・
「ありがとうございました!」「ありがとうございました!」「ありがとうございました!」・・・
木霊のように挨拶が響く店内。
カメオ自身が最初に挨拶する場合は問題ない。
だが、他の店員の後に続いて言うのは苦痛過ぎて、声すら出ない。
口パクもすぐにバレ、「大きな声で!」と叱られた。
何とか誰よりも早く挨拶できないかと思って試してみたが、諸々の事情で難しかった。
他の店員から下される「接客態度がイイカゲン」という評価に焦ったカメオは、ある日店長に悩みを打ち明けた。
今までいろんな人に「くだらない」と言われたカメオの訴えを、店長は親身になって聞いてくれた。
しばし考えた店長から、カメオにある提案がなされた。
「大変かもしれないけど」と店長は言ったが、カメオは提案を受けることにした。
そして今、カメオは元気に全く同じ仕事を続けている。
他の店員に続けて挨拶する時も、もう嫌悪感を感じない。
店長もいつも「前よりハキハキしてていい感じだよ」などと褒めてくれる。
店長の提案の内容と、カメオが嫌悪感を感じなくなった理由を述べよ。
ただし、店長の提案の内容に、カメオ以外の人への指示・依頼等は含まれていない。
転載元: 「Repeat after me !」 作者: ニックネーム (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/9220
店長は、遠い地方の支店長として異動することが決まっていた。
そこでカメオに、一緒にその支店で働くことを提案した。
その地域の方言は、カメオの話す言葉とは発音やイントネーションがかなり違う。
「だからね、『人の言葉の繰り返し』じゃなくて、『自分の言葉に翻訳してる』って気分になれるんじゃないかと思うんだ。
不慣れな土地で生活するのは大変かもしれないけど、カメオ君にヤル気があるなら、どうかな?」
元より独り者で身軽なカメオは、一にも二にもなく店長の提案に乗ったのであった。