誰よりも強欲に男から高価な美術品を巻き上げ、生前誰にも自分の集めた富を渡そうとしなかったドナテラ。
しかしその死後、彼女の行為は人々に高く評価されたという。
どういうことか。
*Q5 セルフリサイクルです。
*元ネタがあります。
転載元: 「【アートますか?リサイクル】Miss Americana & The Heartbreak Prince」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/9155
*表現弾圧の対象となる元夫の作品を当局の没収から守り抜くことができたから。
ドナテラの夫は著名な芸術家だった。
しかし、わずか3年の結婚生活は、夫の女性関係によりピリオドを打つことになった。
泥沼の争いの結果、ドナテラは二人でいた頃に夫が作成した作品のうち、夫の手元にあった作品の多くを手にすることとなった。
「強欲女」
「私利私欲のために夫の財産を巻き上げた」
「自分だって大概だったくせに」
「あれだけ有名なアーティストなんだから、浮気ぐらい我慢しろや」
ドナテラに対する世間の風当たりは強かったが、彼女はそんなこと気にも留めなかった。
「金目当てじゃない。これは私の権利だ」
そんな物言いも、良識ある人々の神経を逆なでした。
しかし、事態は一転した。
政局の急変により、独裁者の率いる当局による激しい表現弾圧が行われたのだ。
ドナテラの夫のような、「過激で退廃した作品」は、当局により処分の憂き目にあった。
美術館や個人コレクターの多くが、泣く泣くそれに従わざるを得なかった。
だが、ドナテラは違った。
「誰より強欲な」彼女は、夫と二人三脚で手に入れた「富」である夫の絵画を当局なんかに渡す気はなかった。
それは、彼女の女としての意地だった。
様々な手を使って第三国の信頼できる友人に預けるなどして、彼女は夫の作品を守り抜いた。
その後、独裁政権は倒れ、人々は自由に芸術を楽しめるようになった。
ドナテラは、夫の作品を手元に戻し、一生それを眺めて楽しんだ。
そして、こう言い残して世を去った。
「私の手元にあるあの人の作品を、全て国立美術館に寄付いたします。これは、私があの人と過ごした、人生で一番幸せだった時期の輝かしい思い出だから。」
もう彼女を強欲な女呼ばわりする人はどこにもいなかった。
今では、国立美術館に燦然と輝く「ドナテラ・コレクション」が来館者の目を楽しませている。
*元ネタ:ガブリエーレ・ミュンター(カンディンスキーの恋人だったアーティスト)のエピソード。