あるお店の看板メニューは、とある高貴な人物の犯罪行為により生まれたものだという。
特にこれといった特別な材料を使ったり、特殊な調理法を用いたりしたものではなく、店もごく普通の街の店なのというのだが、どういった経緯でそのメニューが看板メニューになったのだろうか?
転載元: 「【二物衝撃 No.20】"Oh, my God, who is she?"」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/9051
*お店で食事をしても自らお金を払う習慣がない王族が、お忍びでお店に行った時、ついそのまま食い逃げ(詐欺罪)してしまった。
それが高貴な人物と判明したため、罪に問われることはなかったものの、お店に迷惑をかけたことへの謝罪の気持ちとして、その日注文したメニューに自分の名を関することを許した。
タルタルーガ王室では、カーメリータ王女が幼い頃から、市井のレストランに出向くことがあった。
閉鎖的な王宮に篭ってばかりいては、国民の声に耳を傾けることはできない、日々の国民の生活に触れることが必要だ、という先王の方針によるものだった。
もちろん、行く店は名だたる有名店ばかりで、代金は後日王宮から払われるので、その場で支払うことなどはなかった。
王女自身は、「大変美味しかったです。シェフによろしくお伝えください。」と天使のような微笑みを浮かべるだけでよかった。
そんな王女も学校に通うようになった。
周囲の友人たちは、学校の帰りに流行りのカフェに立ち寄って、楽しそうだ。
王女は、それが羨ましかった。
しかし、そんなお店に入りたいと言ったら、周りに反対されるだろう。
王女は、勇気を出してお忍びでこっそり入ることにした。
いかにも「映え」そうな店内で、一度食べてみたかったふわっふわのパンケーキや、フルーツたっぷりのパフェを満喫し、お店を出ようとしたカーメリータ王女。
そこでふと気付く。自分がお金を持ってきていないことに。
そもそもそんな発想がないし、日ごろ自分のお金など持って歩いていないのだから、仕方がない。
まあ、なんとかなるだろうと、いつものように「とても美味しかったです」とニッコリ笑ってお店を出た、
そして、歩き始めてしばらく経った時だった。
「おい、おねーちゃん、ずいぶん堂々と食い逃げするもんだな。ちょっと待ってろ。」 そして、がたいのいい店員に腕を掴まれた。
突然のことにどうしていいかわからず、うろたえる王女。
駆けつけるパトカー。
パトカーから物々しく降りてきた警察官に取り押さえられたのは、もちろん、店員の方である。
店からは店長やオーナーも出てきて、必死で警察官に謝り倒す。
王女は気付いた。自分がどんでもないことをしてしまったということに。
そして、自分がこれまでなんでも許される環境にいて、その自分の言動が、周りに大きな影響を与えうるということに。
「警察官の皆様、どうか、私の軽率な行動をお許しください。そして、この人たちを咎めないでください。」
「殿下…」
「申し訳ございません。お店には後ほど王宮から代金と謝罪をお届けします。でも、それとは別に私個人の気持ちとして、どうか…」
「え、まさか、そんな…」
王女がその場でさらさらと書いて渡した紙には、こう書いてあった。
「今日私が注文したメニューに、『プリンセス』の名前を冠することを認めます。」
以後、「プリンセス・パンケーキ」「プリンセス・パフェ」 はそのカフェの大人気看板メニューとなり、店は一層繁盛したのであった。