「くっ・・・ツキに見放されたか」
1万円分の宝くじを買ったら1等+前後賞で5億円が当たった男。彼は確かに1等+前後賞の5億円が当たることを期待して宝くじを買ったのに、何がそんなに不満なのだろう?
*Q3 おっさんのリサイクルです。
転載元: 「【くっつきますか?リサイクル】tell me, what happens when it stops?」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/8792
*大好きだった可愛い可愛い「貧乏神」な女の子、ツキが去ってしまったから。
男は、金持ちだった。
そこそこの大学も出ている。
見た目も、イケメンというほどではないが、まあ悪くないと思っている。
会話上手ではないが、コミュ障というほどでもない。
それなのに、なぜか親しい人が周りにいない。
特に女性には縁がなかった。
愛する人がいなかったら、お金なんていくらあったって意味がない。
だから必死で祈った。自分の理想の女性に会えるように、と。
そのためには、ちょっとやそっと財産を失ってもかまわない、と。
そんなある日、スポーツクラブでたまたま知り合った女性と仲良くなった。
名前は、桂川月未。
顔もスタイルもセンスも性格も趣味も何もかもがドストライクだった。
男はすぐに月未と恋に落ちた。
二人は、息がぴったりで、男は、とても楽しい日々を過ごしていた。
「ツキ、今度ここ行ってみない?」
「はーい♡楽しそう。いいね!」
「ツキ、たまにはこんな服着てみてよ?」
「はーい♡いいよー」
ツキは、どんなことでもにっこり笑って受け入れた。
ツキとの生活には、何一つ不満はなかった。
…ただ一つ、金運だけがみるみるうちに悪化していった。
ツキが浪費家というわけではない。
ただ、仕事がうまくいかなくなり、ギャンブルが外れ、資産運用が失敗していったのだ。
それでも、せっかく手にしたツキの笑顔が見たかった。
ツキは決して自分から高いものを望むことはなかったが、つい綺麗な服を買ってあげたり、おいしいお店に連れて行ってあげたり、旅行に連れて行ってあげたりした。
しかし、そろそろ限界だ。
あれだけあった貯金も底をついた。
「ツキ…ごめん。もう君に何もしてあげられない。こんな僕と一緒にいても不幸になるだけだ。」
「はーい♡じゃあねー。」
ツキはいつもと同じような笑顔で言ってスタスタと部屋を出て行った。
「あ、待って最後にこれ」
「何?」
「この1万で駅前の宝くじ売り場で、宝くじ買って。明日の夕方の5時10分だよ。
いい?5時10分だからね。」
そう言い残して、ツキは部屋を出て行った。
「あ、まって、ツキ」
おいまさか、冗談だろ。
ドアを開けても、そこにはツキはもういなかった。
男は、翌日の5時10分、ツキに言われた通りに駅前の宝くじ売り場に行った。
もしかしたら、ツキがそこにいるんじゃないかと思ったから。
ツキはいなかった。
でも、せっかくここまで来たんだから、宝くじを買って帰ることにした。
宝くじの結果は、1等+前後賞で5億円。
ちょうど、ツキと知り合ってから失った額がちょうどそのぐらいだった。
男はツキに連絡を取ろうと必死で試みた。
しかし、電話番号もメールアドレスもSNSのアカウントも繋がらず、それどころか、どうしたことか男の端末に残された二人のやりとりさえ跡形もなく消え失せていた。
「くっ・・・ツキに見放されたか」
5万円を手にした帰り道、男はそう呟いた。
「はーい♡」
そう言って微笑むツキが、そこにいる気がした。