優勝して金メダルを授与されたのに、全然喜ばなかったアスリート。
名誉あることなのに、一体何故?
*Q4 名無し編集者さんのリサイクルです。
転載元: 「【金ますか?リサイクル】like a bird without a cage」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/8611
注目を浴びてしまい、亡命の機会を失ったから。
そのアスリートの国は、為政者の独裁体制で知られていた。
一般市民の生活は厳しく抑圧され、自由というものはなかった。
海外に渡航どころか、海外の文化に触れることさえ容易ではない。
卓越した運動神経を持ち、この国のメジャーなスポーツの選手だった彼は、考えた。
このままこの競技を続ければ、素晴らしい環境で練習することができる。
そこには、国の名誉と威信がかかっているからだ。
一流選手になれば、それなりの待遇も待っている。
しかし、言ってもそれは、この、「不自由な国」の中での高待遇だ。
彼はそんなことを望んでいなかった。
本当に自由な環境で、心のままに生きたい。
だから、彼は、周りの反対を押し切って、この国での「マイナー競技」に転向することにした。
彼ほどの運動能力があれば、たとえお粗末な練習環境でも、国の代表ぐらいにはなれるだろう。
マイナー競技なら競技人口も少ないから、なおのことだ。
国の代表になれば、国際大会に出るという名目で、大手を振って海外に渡航できる。
しかし、当然ながら国民の注目は浴びない。
また、海外のトップクラスの選手には明らかに敵わない実力なので、国際大会に出てもすぐに敗退することだろう。
そこが、彼の狙い目だった。
敗退直後、彼は、競技会開催国にこっそり亡命する計画を立てた。
逃亡の手筈は、同じ競技の他国の選手仲間が整えてくれていた。
ところが、競技会当日、番狂わせが起きた。
有力選手の体調不良での脱落や時の運などのせいで、なぜか、彼が優勝してしまったのだ。
全くノーマークのダークホースが優勝したとあって、世界中の注目が集まった。
彼はメディアに追われ、休む間もない。
もちろん、こっそり亡命など話にならない。
帰国後、彼は、国の英雄として扱われた。素晴らしい名誉だ。
彼のやっていた競技の選手は、今後国家としても力を入れて育成していくことだろう。
いずれ、彼はそこの協会長になったりするのだ。
それは、一生この国で生きていかなければならないことを意味する。
この事態をどうして喜べようか。