狩山 良平(54)は、とある田舎でジビエ専門料理店を営んでいる。
狩山は自ら猟に行き、仕留めた獲物を店で振る舞っている。
店は年季のある木造造りで、狩った鹿の毛皮が飾られたりと、ジビエ専門店らしい雰囲気を醸し出している。
かつて食材を提供してくれた先輩猟師達は、高齢化に伴い、どんどん引退していった。
今この店にいるのは狩山と、数年前から勤める佐久間 礼子(26)のみだ。
佐久間はジビエ好きで、実際に肉を見ても全然物怖じしない、度胸と愛嬌のある看板娘だ。
食材も客も売上も多くはなく、ほとんどその日暮らしのようなものだが、狩山はこの暮らしを気に入っていた。
しかしある秋の日、狩山は、右足を骨折してしまう。全治3ヶ月だ。
「冬前に3ヶ月も猟ができないんじゃ店を開けることはできない。お前に給料を出すこともできない。そろそろ店をたたむ時がきたのかもなあ…」
そんな狩山に佐久間はこう言った。
「狩山さん、私を撃ち殺してください。」
なぜそんなことを言ったのだろう?
転載元: 「【二物衝撃 No.4】猟師の良心」 作者: 小森 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/8411
「実は私は、幼い頃に助けていただいた熊なんです。」
なんということか。
佐久間は、昔、罠にかかっていた子熊だというのだ。当時の狩山は、こんな小さな獲物では大して肉がとれないと、子熊を逃がしていた。
「恩返しがしたくて、この店へ働きにやってきました。一緒に働いてきて、狩山さんがこの店をとても大事にされていることが伝わってきました。私は、狩山さんもこの店も大好きです。狩山さんにお店を続けてほしい。
今こそご恩を返す時です。」
「肉は熊汁として振る舞ってください。
毛皮はなめせば敷物になるでしょう。売ってお金にしていただいてもいいですし、店に置いて客寄せに使ってもいいです。
さあ、私を撃ち殺してください。」