仕事ができて、常に部下のことを思いやる、美しく優しい美魔女上司、鳥居美蘭(とりい・みらん)。
颯爽とプラダを着こなすファッショニスタだ。
そんな彼女は仲間から「鬼」と呼ばれていたのだが、ある日を境に「悪魔」と言われるようになったのは、どうしてなのだろう。
もちろんパワハラなどとは無縁の理想の上司だし、旧姓やハンドルネームに鬼や悪魔やそれにまつわる言葉が入っているわけでもない。
*Q13 セルフアレンジ(オマージュ)です。
転載元: 「【悪ますか?オマージュ】I can’t compete with a she wolf」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/8408
*ツインテールが短い頃は鬼の角のようだったが、髪が長くなってきたらヤギの角のようになって、シルエットが悪魔っぽくなった。
私は、鳥居美蘭。
常に部下のことを思いやり、颯爽とハイブランドを着こなすファッショニスタの美魔女上司…なのだが、そうあり続けるのも、実はそう簡単なことではない。
部下が困っていたら率先して手を差し伸べていく…と自分の仕事が溜まっていく。
ストレスも溜まっていく。
そして、もっとまずいことに…脂肪まで溜まっていく。
このままでは大好きなお洋服がかっこよく着られなくなってしまう。それだけは嫌だ。
運動なんて大嫌いだったのだが、一念発起、ジムに通うことにした。
こんな所でプラダスポーツのトップスもmiumiuのスニーカーも下ろしたくなかったんだけど、仕方ない。
マシーンはなんか恥ずかしいので、ダンスのスタジオに入ることにした。
スタジオではいつも仲良さそうにしてる人たちが多いけど、私はあまり馴染む気もなかった。
そんなある日のこと。
「こんにちは〜 お姉さんいつもかっこいいカッコして踊ってますよね?」
いつも前の方で踊ってる目立つ子だ。
「私も可愛いウェアとか大好き!」
「ああ…いつも、ツインテールにしてて可愛いですよね。ダンスも上手だし、目立ってて素敵です。」
「わー おしゃれな人に褒められて嬉し〜〜!! っていうか、お姉さんもツインテールにしたらどうです?」
そういうと、私のショートのウェービーヘアをハーフツインにし始めた。
「短すぎない…?鬼のツノみたいw」
「いいじゃないですか、鬼w セクシーな鬼っすよ♡ 私も狼女みたいとかよく言われるし」
「そ、そんなもの?」
以後、私はスタジオに参加するときはハーフツインにするようになった。
「あー!!似合いますよ鬼!」
「ありがとう、狼女w」
普段と違う自分になってジムに行くと、心なしか、きびきび自信を持って動けるようになった。
ストレスもスッキリして、仕事のモティベーションも上がる気がする。
ジムに通い始めて3か月。
そういえばだいぶ髪も伸びた。
そして、なんとなく仲良くなった彼女と、私は毎回一緒に帰る。
「お姉さん、だいぶ髪伸びましたね〜〜」
そういえば、この子は私の名前を訊こうとしない。もちろん仕事も。
よくよく考えてみれば私もだ。
「そうね…美容院行けてないし…」
「その感じだと、鬼って言うより…」
「何?」
「ヤギ。悪魔の手先」
「何それw」
「いいじゃないですか。小悪魔。多分鬼より似合ってますよ。これからは小悪魔と狼女ってことで。髪も伸ばしましょうよ。」
地面に目を落とすと、満月のような黄色い街灯が、連れ立って歩く狼女と悪魔のシルエットを映し出していた。